(※写真はイメージです/PIXTA)

政府税制調査会※は11月13日、経済社会のデジタル化と納税環境整備をテーマに専門家会合を開き、国税庁が「財産評価を巡る諸問題」に関する資料を提示した。資料によると、財産評価基本通達6項の運用課題や、一棟賃貸マンションや不動産小口化商品を活用した相続税対策で節税効果が大きい点を問題視しているようだ。

財産評価基本通達6項

財産評価基本通達総則6項(以下、総則6項)は、相続財産の評価で例外的に通達評価を適用する規定で、通達に従って評価した場合に実勢価格より大幅に低くなる資産について、国税庁長官の指示を受けて国税当局が再評価できると定められている。

 

平成27年から令和6年までの総則6項の累計適用件数は27件(不動産13件、株式14件)にとどまるが、総則6項を活用した節税スキームの多くは、評価方法の不明確さを利用したケースであり、納税者が意図的に適用を求める動きも見られる。

 

国税庁は「総則6項による評価に関係する訴訟が増加傾向にあり、個別対応について納税者の予見性という観点から批判が寄せられている」としている。

 

令和4年4月の最高裁判決では、相続税の節税目的で多額の借り入れをしてタワーマンションを購入し、通達評価額で申告した相続税に対して税務署が鑑定評価額で更正処分を行った事案が最高裁で争われた。判決は、「著しく不適当」と認められる特別な事情がある場合には通達によらない評価方法も許容されると判断し、国税側の更正処分を適法と認め、納税者側の訴えを棄却した。

 

この最高裁判決を契機として、マンション通達が発出され、分譲マンション等の区分所有不動産の評価適正化が図られた。しかし、国税庁は「依然として通達が適用されない一棟所有の賃貸マンションをはじめとする貸付用不動産を利用したスキームが散見される」と指摘し、相続税制度の公平性を損ねる可能性を指摘している。

一棟賃貸マンションの取得による節税事例

令和4年の最高裁判決後に出された「マンション通達」は区分所有マンションの評価適正化を目的としているが、国税庁によると通達の適用外である一棟所有の賃貸マンションを活用した節税事例も確認されているという。

 

たとえば、取得価額21億円の物件を通達評価額4.2億円として相続税申告し、約7.9億円の税負担を軽減したケースがあった。

 

国税庁は、こうしたスキームについて「個別に対応せざるを得ない状況」と説明しており、今後の制度対応が検討される可能性がありそうだ。

不動産小口化商品による贈与事例

資料では、貸付用不動産を小口化した信託受益権などを贈与する手法による通達評価額の圧縮に利用されている点にも触れている。

 

たとえば、販売会社から不動産小口化商品(信託受益権)を3,000万円で購入した贈与者が、9歳の孫に贈与。受贈者は通達に基づき480万円と評価し、その後、信託受益権を市場価格で売買し、取得価額とほぼ同額で現金化した例が示されている。

 

通達評価額が取得価額の約6分の1に圧縮されるケースもあり、相続開始直前にこうした贈与が集中する傾向がある。

 

国税庁は「相続税対策を意図した駆け込み取得や物件の希少性により高値で取引される傾向があり、貸室の稼働状況等が悪化すると借入金返済や固定資産税納付が困難になる後継者も見られる」と、将来的なリスクについて指摘している。

市場価格と通達評価額の乖離が抜け穴に

貸付用不動産の市場価格と通達評価額の乖離も課題として取り上げている。市場価格は収益性によって価値判断され、稼働状況が良好で賃貸割合が高いほど上昇する。一方、評価通達では借家人の支配権による利用制約を考慮し、賃貸割合が高い場合は評価額が低くなる。

 

市場価格:稼働状況が良く、賃貸割合が高いほど価格上昇

通達評価額:借家人が多い場合、評価額は低く算定

 

この逆相関により、通達評価額を圧縮して節税に利用するスキームが生まれやすく、制度的な抜け穴として国税庁が課題視している。

相続税制度、公平性と適正化への動きは?…税制改正に注目

国税庁は、総則6項の透明性確保や、マンション通達の適用外での一棟賃貸マンション・不動産小口化商品による節税スキームへの対応が必要であると強調している。今後は総則6項の明確化や評価方法の適正化が検討され、相続税制度の公平性と適正化に向けた動きがあるかどうか、注目されるところだ。

 

※政府税制調査会とは毎年度の具体的な税制改正を議論する与党税制調査会に対し、政府税調は大学教授などの有識者をメンバーとし、中長期的な税制のあり方を議論・提言する総理大臣の諮問機関。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

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