(※写真はイメージです/PIXTA)

2026年の確定申告が迫っているが、なかでも気になるのは医療費控除ではないだろうか。例えば、国民病ともいわれる花粉症は、本格的なシーズンの到来とともに、マスク、薬、空気清浄機などに多額の出費を強いられる人も多い。くしゃみ、鼻水、目のかゆみといったつらい症状の対策のため、年間5万円程度から、人によっては10万円以上を費やすケースもある。しかし、「花粉症対策=医療費控除の対象」と思い込むのは早計だ。ここでは、医療費控除の境界線を整理する。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

2026年の確定申告、対象になるのは「去年の支出」

まず押さえておきたいのが、確定申告の対象期間である。2026年2月〜3月に行う確定申告で対象となるのは、2025年1月1日から12月31日までに支払った医療費だ。つまり、下記の通りとなる。

 

2025年中に購入・支払った花粉症の治療費・薬代 → 2026年の確定申告対象

2026年に入ってから購入・支払ったもの → 2027年の確定申告対象

 

花粉症シーズンは年明けから本格化するため、「今年の花粉症対策費用は、今回の確定申告には使えない」というケースも多い。対象になるかどうかは、購入日・支払日が2025年かどうかが分かれ目となる。

医療費控除の基本ルール

医療費控除の対象となるのは、「医師または歯科医師による診療・治療を受けるために直接必要な費用」および「治療のために必要な医薬品の購入費」である。

 

国税庁は、医療費控除について「治療を目的とした医療行為」に限定すると明確に示しており、予防や健康管理、生活環境の改善を目的とした支出は、原則として対象外としている。

 

この「治療」と「予防・対策」の線引きこそが、花粉症対策費用の税務判断を分ける最大のポイントとなる。

「市販薬」は対象になるものあり、「マスク」は対象外

ここで多くの人が誤解しやすいのが、ドラッグストアで購入する市販薬の扱いである。

 

【医療費控除の対象】

医師の処方箋による薬代

●ドラッグストアで購入した市販の鼻炎薬・目薬・点鼻薬など※1

※1 花粉症の症状を抑えるなど、「治療」を目的として使用した医薬品に限り、処方箋がなくても対象

通院のための公共交通機関(電車・バス)の運賃

 

【医療費控除の対象外】

マスク・花粉対策用メガネ(予防用の備品とみなされる)

花粉ブロックスプレー・洗顔料

自家用車で通院した際のガソリン代・駐車場代

 

ポイントは、「治療目的か」「予防・対策目的か」。この違いが、税務上の扱いを大きく分ける。

「空気清浄機」は医療費控除の対象?

花粉症対策の代表格といえば空気清浄機である。しかし、結論から言えば、空気清浄機は医療費控除の対象にはならない。

 

国税庁の「質疑応答事例」では、喘息患者が医師の勧めにより空気清浄機を設置した場合であっても、医師の診療を受けるために「直接必要な費用」には該当せず、医療費控除の対象にはならないとされている。

 

花粉症の場合も同様で、「生活環境を改善する目的」と判断される。加湿器や布団クリーナーなども、原則として同様の扱いとなる。

10万円に届かない場合の救済措置「セルフメディケーション税制」

医療費の総額が10万円(所得が200万円未満の人は所得の5%)に満たない場合でも、税制上の救済策が用意されている。

 

特定の成分を含む市販薬(スイッチOTC医薬品など)の購入額が年間1万2,000円を超えている場合、「セルフメディケーション税制」を利用できる可能性がある。

 

この制度を利用する場合、レシートに「セルフメディケーション税制対象」などの印(★マークなど)が付いているかを確認し、必ず保管しておくことが重要である※2

 

※2 医療費控除との併用はできないため、どちらが有利かを計算したうえで選択する必要がある。

「家族の医療費・薬代」も合算できる

医療費控除の対象となるのは、本人分に限られない。「生計を一にする配偶者や子ども、親族」のために支払った医療費や薬代も、合算して申告可能である。

 

家族全体の花粉症治療費を合計すると、控除の対象額に達するケースも少なくない。

個人事業主・経営者なら「空気清浄機は経費」になる?

「仕事場に置く空気清浄機なら経費になるのではないか」という疑問も多い。

 

事務所・店舗専用の場合

来客対応や従業員の作業環境を整える目的であれば、福利厚生費や事務用品費として経費計上できる可能性がある。

 

自宅兼事務所の場合

私的利用分を除外する「家事按分」が必要となる。リビングなど家族も使用する場所に設置している場合、全額を経費とすることは原則として認められない。

誤って申告した場合のリスク

医療費控除の対象外となる支出(空気清浄機やマスクなど)を含めて申告し、税務調査で否認された場合、以下の負担が生じる可能性がある。

 

追徴税額:本来納めるべき税額との差額

過少申告加算税:原則10%(悪質な場合は15%)

延滞税:納付期限からの日数に応じた利息

 

実務の現場では、健康家電や日用品を医療費控除や経費に含めた結果、否認され、追徴課税を受けるケースも珍しくない。

 

花粉症対策の出費は、もはや多くの人にとって「生活必需費」といえる。しかし、税制上は「治療」と「予防・対策」の線引きが極めて厳格に行われていると言えよう。その支出が「治療に直結するか(医療費控除)」、あるいは「業務に必要か(経費)」という客観的な基準で判断することが、最も安全で確実な節税策となる。

 

2026年の確定申告では、対象期間(2025年中の支出)を正しく理解したうえで、安易な自己判断を避け、ルールに沿った申告を心がけたいところだ。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

 

 \2月7日(土)-8日(日)限定配信/
 調査官は重加算税をかけたがる 
相続税の「税務調査」の実態と対処法

 

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