(※写真はイメージです/PIXTA)

グローバル化に次々と成功しているドイツの中小企業は、日本とは何が異なるのだろうか。その1つに商談への意識が挙げられる。日本では展示会を新製品の紹介の場とする認識が一般的だが、ドイツとはどのような点に意識の差があるのだろうか。本記事では、岩本晃一氏の著書『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(朝日新聞出版)より、世界進出を果たすドイツと内弁慶の日本の中小企業とを比較する。両者の間には明確な意識の差が存在した。

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地方政府の“実働部隊”経済振興公社による活動 

続いて、地方政府の経済振興公社による活動である。

ドイツでは、州政府の下には必ず、そして、ほとんどの市政府の下にも、「経済振興公社(Business Development GmbH)」がある。活動内容は、まさに名称のとおり、ビジネスを開発することである。

地方政府が100%株式を保有する会社であり、地方政府経済部門の“実働部隊”である。筆者が受けた印象としては、日本における「事業団」の活動形態に近いと感じた。すなわち、州政府が100%の活動資金を提供し、与えられたミッションを果たすため事業を行う。

日本の地方自治体の下には、土地開発公社や住宅供給公社はあるが、経済振興公社はない。こういった組織形態の違いが、日本とドイツの地方政府がそれぞれ何を重視しているのかを端的に表していると言えよう。

経済振興公社が行う輸出振興支援業務は、外国の展示会への出展を支援することが主である。経済振興公社と商工会議所が行う中小企業のグローバル支援業務は、役割分担されているようだ。

すなわち、ドイツ商工会議所は、外国に在外商工会議所を設置し、外国での事業活動を直接支援している。一方、経済振興公社は、地元の中小企業を率いて、外国の展示会に出展させ、さらに目ぼしい外国企業をピックアップし、ドイツ企業と引き合わせている。

たとえば、ザクセン州の経済振興公社には、筆者が調査した2015年時点で、職員が約50人おり、1年間で14回、すなわち1か月に1回以上のペースで外国の展示会に出展しているということだった。日本でも、地方自治体や関連団体などが外国の展示会に出展することがあるが、せいぜい1年に1回であろう。出展のペースがまるで違うということである。

しかも、1社1展示会当たり5000ユーロの補助金を出しており、企業の自己負担は30〜50%程度となっていた。また、公社の職員が、実際に製品を購入してくれそうな企業を探し出し、ドイツ企業に紹介することもあるそうだ。

 

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次ページ展示会ブースは製品紹介ではなく、「真剣なビジネスの場」

※本連載は、岩本晃一氏の著書『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、編集したものです。

高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人

高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人

岩本 晃一

朝日新聞出版

ドイツに抜かれ、名目GDPが世界第4位に転落した日本。“ものづくりの国”という共通点のある日本とドイツは、約99%が中小企業であるのも同じだが、日本の製造業の生産性はドイツの3分の2。それはなぜか? ドイツの優れた中小…

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