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自由と引き換えに露わになる、構造的な課題
佳代さんのように、結婚生活の多くを専業主婦として過ごした女性にとって、離婚後の生活は非常に脆弱になりやすい現実があります。
総務省の2024年の家計調査では、65歳以上の単身無職世帯の平均支出はおよそ15万円前後。一方で、国民年金の平均受給額は月約5万6,000円。離婚による年金分割を受けたとしても、基礎的な生活費を賄うには不十分です。
あるとき佳代さんはかつて住んでいたころのことを思い出しました。
(そういえば、あのスーパーは火曜日が特売日だったわ……)
少しでも安い食材を求め、佳代さんは久しぶりに昔通ったスーパーへと足を運びました。すると、特売の棚の前で、見慣れた顔に再会します。元ご近所の、同世代の女性でした。
「あら、佳代さん? 久しぶり。どうしたの?」
「ええ、ここの特売日だったと思って……。一人だと、買い物もなにかと気を使うでしょ」佳代さんがそういうと、女性も「わかるわあ」と深く頷きました。
「私なんて、もう豆腐と卵は特売日しか買わないのよ」
「本当よね……。私も、嗜好品はほとんど買わなくなったわ」
2人は苦笑しながらも、どこかしら張り裂けそうな気持ちを共有していました。加えて、専業主婦だった期間が長いと、以下の課題が一度に押し寄せます。
・年金額が低く、固定費に圧迫されやすい
・正社員歴が短いため、再就職で不利
・知人とのつながりが弱く、相談先が限られる
・精神的な寂しさから過度な節約に陥る
さらに見落とされがちなのが、孤独です。夜、ふとテレビを消した瞬間、部屋の静けさ。誰かに相談しようにも、子どもたちは自分の家庭で精いっぱい。実家の親はすでに他界し、兄弟とも疎遠。
「私、こんなにも一人だったかしら……」
佳代さんは気づけば、スマホの明かりだけを頼りに布団に入るようになりました。孤独は家計の悪化と比例するように、メンタルにも影響を与えます。心細さは判断力を鈍らせ、必要以上に節約して体調を崩すこともあります。
人生後半の自由は、美しくみえて実は「支える資源」が必要なものなのです。
