「このまま一緒にいれば安心」そう思って始めた同居
恵美さん(仮名・50歳)は、数年前から母・和子さん(仮名・78歳)と同居しています。
きっかけは父の死でした。母が一人暮らしになったことで、「このまま一人にしておくのは心配だ」と感じ、恵美さんが実家に戻る形で同居を始めたのです。
恵美さんはフルタイムで働き、月収は約45万円。経済的には自立しており、生活に大きな不安はありませんでした。一方、和子さんの収入は年金月14万円ほど。持ち家で家賃負担はないものの、単身で暮らすにはやや余裕のない水準でした。
総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身無職世帯の消費支出は月約14.8万円です。和子さんの年金額は、この平均支出に近く、突発的な支出や物価上昇の影響を受けやすい状況でした。
「一緒に暮らせば、お互いに安心だと思っていました」
最初のうちは、その考えに間違いはないように思えました。食事は一緒に取り、帰宅すれば家に誰かがいる。生活の中に自然と会話が生まれ、孤独を感じる場面も減ったといいます。
しかし、時間が経つにつれて、少しずつ違和感が積み重なっていきました。恵美さんが最初に違和感を覚えたのは、日々の生活の細かな部分でした。
仕事から帰宅すると、母は「今日の夕飯はどうするの?」と当然のように聞いてきます。食事の準備は自然と恵美さんの役割になっていました。
「最初は気にしていませんでした。でも、毎日続くと負担に感じるようになって」
休日も完全に休めるわけではありませんでした。買い物や通院の付き添い、家事全般。気づけば、自分の時間はほとんど残っていなかったといいます。
生活リズムの違いも、徐々にストレスになっていきます。恵美さんは仕事の関係で帰宅が遅くなることもありましたが、母は早い時間に食事を済ませたがります。
「待たせてしまうことに気を使って、仕事が終わると急いで帰るようになりました」
小さな配慮の積み重ねが、少しずつ負担になっていきました。
さらに、金銭面でも見えにくい問題がありました。食費や光熱費の多くは恵美さんが負担していましたが、それについて明確に話し合ったことはありませんでした。
「なんとなく私が払う流れになっていました」
厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』によると、50〜54歳女性の平均賃金は月額30万5,400円です。恵美さんの収入はそれより高いものの、生活費や将来の備えを考えると、余裕があるとは言い切れませんでした。
「自分のためのお金を考える余裕がなくなっていきました」
