(※写真はイメージです/PIXTA)

埼玉県在住の黒柳陽子さん(仮名・35歳)は、夫(37歳)と小学4、6年生の息子2人の4人家族。共働きで世帯年収800万円にもかかわらず、最近の夫の“節約志向”はエスカレート。SNSで見た節約術をそのまま家庭に持ち込み、食費や化粧品、ランチまでチェックされる日々が続いています。話の通じない夫に愛想を尽かした陽子さんは離婚を視野に入れ始めました。

夫がSNSに依存するようになったきっかけ

ところで、夫はなぜSNSのみんなを信じるようになってしまったのでしょうか?

 

「夫は節約に努めていますが、家計的に問題があるわけではありません。貯金もできています。それなのに、夫がSNSで『うちの妻も節約に励んでいます』と投稿したら『自慢の奥さんですね!』と褒められて有頂天になり、すっかりSNS依存になってしまったんです。最近はお金だけではなく、私の時間まで管理するようになってきました。またどこかのネットの記事でワーキングマザーの1日スケジュールが紹介されていたみたいで、『見て! この人は5時に起きて家族の弁当を作って出勤しているんだって』と比べるようなことを言われて……。この記事を企画した編集者をぶん殴りたくなりました」

経済的DVに該当するケースも

SNSでは、「年収○○万円でこの生活ができる」「我が家の節約術」といった投稿が日々シェアされ、人気を集めています。家計管理のモチベーションになる一方で、現実とのギャップに苦しむ人も少なくありません。

 

実際、食費や光熱費は物価上昇の影響を強く受けており、2025年9月の全国消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前年同月比2.9%上昇。前年より節約が難しくなっている状況です。

 

さらに、お金の使い方を細かく制限する、支出を逐一チェックする――。こうした行為が度を越すと、「経済的DV(経済的支配)」に該当する場合があります。話し合いが成り立たず、精神的に追い詰められるようであれば、早めに外部の相談機関に助けを求めることが大切です。

節約は「競争」ではなく「選択」

SNSにあふれる「理想の家計」は、時に人を追い詰めます。数字の比較よりも大切なのは、家族の実情に合った“現実的な暮らし”を守ること。

 

陽子さんは今、自分の心と子供たちを守るため、離婚を視野に動き始めています。

 

「食費を見直すことも大事だけど、それ以上に大切なのは、家族が健康的に暮らせて楽しくご飯を食べられること。誰かの真似じゃなくて、“うちのペース”で暮らせるようにしたい」

 

節約の「正解」はSNSの中にあるわけではありません。誰かの投稿よりも、自分と家族の心と体が元気でいられる生活こそが、本当の“賢い家計”なのかもしれません。

 

 

[参考資料]
総務省「家計調査(2025年9月)」

 

 

 

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