昼から飲酒…“自由な生活”の果てに
家にいる時間が増えたAさんは、身体が疲れないせいか夜眠ることができません。逆に朝は起きられず、妻と娘が出勤・登校した後、ようやく目が覚める生活になっていきました。
その後は株取引をしながら、元々好きだったお酒を飲むことが癖になり、気づけばうとうと寝てしまう。せめて夕食の準備はと思うものの、ほとんど経験もなかったことから「こんなに面倒なんて」と、デリバリーやお総菜を並べるように。
人に会わない生活が続き、髭も剃らずに同じスウェットで何日も過ごす、そんなことも当たり前になっていました。
当然、妻がいい顔をするはずもありません。「せめてジムに行ったり散歩をしたりする習慣をつけてほしい」そう言われても、どうしても気力が沸きません。そして、とうとう“その日”はやってきました。
「あなたが言っていた“自由な生活”ってこれなの? 家に閉じこもって毎日何をしているのよ。もう耐えられない」
そう言って、妻は娘を連れて出ていってしまったのです。
「やり直すチャンスがほしい」Aさんの決断
残されたAさんは、静かなマンションにたったひとり。資産は十分あり、家事も子育てを妻と分業してうまくやっていける。そんな自信を持っていた1年前には想像もしていなかった事態が待っていました。
後日、弁護士を介して離婚手続きや財産分与などの説明を受けることになったAさん。婚姻期間中に形成された資産は、原則として財産分与の対象となるとして、約1億円のうち半分が妻のもとへ渡る可能性があるとのこと。さらに、養育費も支払うことになります。
Aさんは自虐的にこう思い、涙しました。
「これだけお金があれば、妻と娘にとって、こんな父親はもう必要ないよな……。金なんてなければ、こんなことにならなかったのか」
ですが、家族と離れ離れになりたくない。やり直すチャンスが欲しい。そう考えたAさんは、素早く行動を起こしました。会社員に戻る決意をしたのです。
早期退職したときには「もう一生働きたくない」と思っていましたが、わずか1年での決断でした。
