10月景気DI、現状・先行きともに「6ヵ月連続上昇」。内閣府も判断を上方修正
10月の「景気ウォッチャー調査」はしっかりした内容になりました。株高などの資産効果、インバウンドの持ち直し、トランプ関税に対する懸念の減少、新政権への期待、ガソリンの暫定税率の廃止、気温の低下などがプラス要因になったようです。
現状判断DI(季節調整値)は49.1と9月から2.0ポイント上昇し、5月から6ヵ月連続で上昇しました。24年3月の49.8以来19ヵ月ぶりの水準に。6ヵ月連続の上昇は現在の季節調整値でみて20年5月~10月の新型コロナウイルスによる急激な落ち込みからの持ち直し局面以来5年ぶりです。
家計動向関連DIは、住宅関連等が低下したものの、小売関連等が上昇したことから上昇しました。企業動向関連DIは非製造業等が上昇したことから上昇しました。雇用関連DIも上昇しています。
先行き判断DI(季節調整値)は前月差4.6ポイント上昇し、53.1と23年7月の53.4以来の水準になりました。こちらも6ヵ月連続の上昇です。家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIが揃って上昇しました。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差1.9ポイント上昇の48.5となり、先行き判断DIは前月差3.9ポイント上昇の52.1です。
10月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方に関する内閣府の判断は、現状に関しては7月から3ヵ月続いた「景気は、持ち直しの動きがみられる」から「景気は、持ち直している」に上方修正。また、先行きについても、3ヵ月連続で同じだった「価格上昇や米国の通商政策の影響を懸念しつつも、持ち直しの動きが続くとみられる」から「価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」に変わりました。
百貨店・旅行関連は3ヵ月連続で「50」超え。業種別DIも改善傾向が鮮明に
10月の業種ごとの現状判断DI(原数値)をみると、百貨店が景気判断で「良」超になる分岐点の50を3ヵ月連続で上回りました。10月の大手百貨店4社の売上高・前年同月比の単純平均は+7.1%で、8月+4.8%、9月+5.8%に続いて3ヵ月連続で増加していることと整合的です。
また、旅行・交通関連も3ヵ月連続で分岐点の50を上回りました。企業動向関連では、製造業経営者・従業員、非製造業経営者・従業員とも10月で50超に転じています。
沖縄DIは54.4と好調維持、南関東・東京都も3ヵ月連続50超
地域別にみた10月の現状判断DIでは、沖縄が54.4と7ヵ月連続で景気判断の分岐点50を上回りました。また、南関東は50.2と10ヵ月ぶりに50超に。南関東のなかに含まれる東京都が53.9と3ヵ月連続で50超になりました。四国は50.3と9ヵ月ぶりに50超になりました。一方、先行き判断DIでは沖縄が60.5です。21年9月以降50ヵ月連続50超が続いています。
インバウンドDIは58.0、7月の落ち込みから様変わりに好調
10月の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは58.0と9月と同水準になり、3ヵ月連続の50超になりました。8月は56.0と7月から12.7ポイントと大きく上昇し、4ヵ月ぶりの50超でした。10月の先行き判断DIは57.7。8月51.0、9月54.2で、こちらも3ヵ月連続の50超です。
7月に大地震が起こるとの風説などが影響し、7月の「外国人orインバウンド」関連判断DIが悪化していたことと様変わりです。7月の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは、43.3と3ヵ月連続の40台。22年2月の31.3以来の低水準でした。7月の先行き判断DIは48.1と23年10月49.9以来の40台でした。
「価格」先行きDI、23年3月以来の高水準に。ガソリン税廃止への期待が追い風
10月「価格or物価」関連現状判断DIは40.1と8月の40.8から0.7ポイント低下したものの、3ヵ月連続、40台は維持しました。10月の現状判断コメント数は224名と9月から5人減り、今年最少タイに。「価格or物価」関連現状判断DIは依然景況感の下振れ要因ですが、DIの微増とコメント数の減少基調から影響は幾分軽微になっているようです。
10月の「価格or物価」関連先行き判断DIは、47.4と23年3月の47.3を上回る水準まで上昇しました。今年4月の37.4からは10.0ポイント改善。コメント数は305名で、2ヵ月連続減少しています。
「新政権が発足したことで、ガソリンの暫定税率の廃止も含め、これからいろいろなことが変わることになる。今後の見通しがどうなるかはわからないものの、多少は景気が回復することになる」という、北海道のスーパー・店長のコメントがありました。10月調査では、先行きの物価の安定方向への変化、それに伴う景況感の改善期待がみられました。
新政権発足で、経営者の“過度な不安”が払拭…10月「関税」DIは2ヵ月連続上昇
日米関税合意により、7月の景気ウォッチャー調査ではトランプ関税の悪影響が幾分和らぎました。「関税」関連DIはそれまでの上昇の反動もあり8月の現状判断DI、先行き判断DIとも4ヵ月ぶりに低下しましたが、9月の現状判断DIは48.1、先行き判断DIは44.1へと2ヵ月ぶりに上昇、10月の現状判断DIは54.7、先行き判断DIは53.1とともに2ヵ月連続上昇し、初めて揃って50超になりました。
「米国の関税政策の影響を不安視する経営者が少なくなかったが、新内閣発足と直近の外交の状況から、楽観視する経営者もではじめている」という、南関東の職業安定所・職員のコメントがありました。コメント数は4月の現状判断104名、先行き判断249名がピークで、10月は現状判断16名、先行き判断は24名まで減少しました。
「気温」関連DI、10月は50超え。気温低下で“繁忙期”を迎える業種も
10月の「気温」関連現状判断DIは50.8、先行き判断DIは59.8と、8月同・現状判断DI 41.7、先行き判断DI 49.2、9月同・現状判断DI 47.4、先行き判断DI 54.8から2ヵ月連続上昇しました。なお、10月の「猛暑」関連現状判断DIが56.9と50超に転じました。
「暑い時期は需要が減る商品のため、気温の低下で繁忙期を迎える。物価が上昇するなか、割安な価格で提供している点も強みと捉えている」という、近畿のその他飲食[洋菓子]管理担当の先行きに関するコメントがありました。
「最低賃金」DI、4ヵ月連続50割れ。企業の“人件費負担増”を懸念
10月調査で「実質賃金」関連判断DIは2ヵ月連続で現状、先行きとも50割れになりました。2025年の実質賃金・前年同月比が確報値でみてマイナスになったことと整合的な感じがします。10月「最低賃金」関連判断DIは4ヵ月連続で現状、先行き判断とも50割れとなりました。
先行き判断のコメントでは「物価の上昇に見合った賃上げとまではいかないが、最低賃金が大幅に引き上げられ、時間給で働く労働者の賃金は上がる。所得税の見直しにより年末調整で思わぬボーナスが入ることで、少しは消費に回ることが期待される」という景気に関し前向きな、南関東の税理士のようなコメントがあります。一方で「最低賃金引上げの影響により、人件費が上昇し、収益を圧迫する」という東京都のその他サービス業[ビルメンテナンス]の経営者のような悲観的なコメントのほうが多い状況です。
「万博」DIは閉幕後も50超、「大阪のレジャー施設に追い風」の声も
10月の「万博」関連現状判断DIは55.2で50超を維持しました。「大阪・関西万博の影響は大きく、3ヵ月前とは比べられないが、万博閉幕後の10月13日以降も、稼働率、客室料金ともに以前と比べて少しよくなっている。11月以降もまずまずの動きであり、少しいい状況となっている」という近畿の都市型ホテル・販売促進担当のコメントがありました。
「万博」関連先行き判断DIは50.8で2ヵ月ぶりに50超になりました。「大阪・関西万博の閉幕で、大阪のレジャー施設には追い風が吹く」という近畿の遊園地・経営者のコメントがありました。
景況感のマイナス要因…「熊」出没と、盛り上がりに欠けた「日本シリーズ」
今年は全国で熊による襲撃事件が相次ぎ、死亡事故も複数発生しています。気候変動やドングリなどの餌不足により、冬でも活動する熊が増加しているようで、住宅街での目撃例もあり、住民の不安が高まっています。10月景気ウォッチャー調査でもコメント数は少ないものの熊に関するコメントがあり、「熊」関連判断DIをつくると現状、先行きともに33.3と景気の悪化要因になっていることがわかりました。
現状判断では「購買単価は上昇傾向にあるが、来客数の減少が顕著で販売量は減少している。熊の出没により、特に夜間の人流が少ない」東北のコンビニ・経営者や、「天候の状況や熊の出没などで観光客が減少し、タクシーの利用客も自然と減少するという状況が続いている」北陸のタクシー運転手のコメントがありました。
また、今年の日本シリーズは、ソフトバンクと阪神の対決になり、ソフトバンクが優勝しました。どちらもリーグ優勝したチームで、それぞれのリーグで人気2位(今年の読売新聞の世論調査による)がクライマックスシリーズを勝ち上がり対決しましたが盛り上がりに欠けたようです。
「例年であれば、プロ野球リーグの優勝に伴うセールなどで地域全体が盛り上がりをみせるが、今年は主にメジャーリーグ関連の話題が中心となっており、国内のイベントとの連動性に乏しく、地域の活気にはつながっていない」という、中国(地方)のスーパー・販売担当のコメントがありました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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