〈ボロボロの実家〉に住む“質素すぎる母”
「正直、生活が大変なんじゃないかと思っていました」
そう語るのは、東京都内で働く会社員の小川真一さん(仮名・51歳)。年末の帰省で2年ぶりに訪れたのは、神奈川県にある築45年の実家。台所は古いガスコンロのまま、風呂は追い焚き機能なし、暖房も石油ストーブ一台だけ。
「カーテンも色褪せていて、“これ、高校生のときから使ってない?”と聞いたくらいです。食事も、煮物と味噌汁とご飯だけ。母はずっと“年金が少ないわ”なんて言っていたので、“大丈夫かな”と心配していたんです」
母・和江さん(78歳・仮名)は10年前に夫を亡くし、現在は一人暮らし。年金は月額6万円ほど。パート歴も短く、厚生年金の加入期間が足りず、ほとんどが国民年金による受給だといいます。
その日、真一さんはふとしたきっかけで通帳を手にして、目を疑いました。
「定期的に“50万円”って振込があるんです。母の口座に。えっ? 何これ?と思って聞いたら、“あれ、言ってなかったっけ?”なんてケロッとしていて」
母の口から語られたのは、「アパート経営による家賃収入」の存在でした。
「お父さんが若い頃に買っていたの。安かったからボロだけど、今でも住んでくれている人がいるから。管理費や諸々を引いても、毎月50万円くらいは残るのよ」
和江さんが所有するのは、駅から徒歩7分の2階建てアパート。築年数は古いものの、6世帯中5部屋が埋まっており、地域の不動産会社が管理を担っています。
固定資産税や修繕費、管理費などを差し引いたうえで、月々50万円前後の収入が口座に振り込まれているとのこと。
「でもお金を使うのが怖いの。年金だけでも暮らせるから、わざわざ贅沢する必要ないでしょ? 何かあったときのために置いてあるの」
通帳の残高はすでに4,000万円近く。にもかかわらず、母の暮らしはずっと変わらなかった――それどころか、息子にも黙っていたという事実に、真一さんは思わず言葉を失ったといいます。
