(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、銀行手続きや金銭管理が負担になることから、家族に通帳や印鑑、キャッシュカードを預けて代行してもらう人は少なくありません。中でも親子間の“暗黙の信頼”に基づく通帳管理は、法的な契約もないまま進められることが多く、金銭トラブルや信頼関係の崩壊を招く例も後を絶ちません。「信用していた家族から思いがけない言葉を告げられた」――そんなケースは、決して他人事ではないのです。

長男にも事情があった…「自分の生活も苦しい」

誠さんには、誠さんなりの事情がありました。

 

彼は契約社員として働いていましたが、コロナ禍で勤務先の業績が悪化し雇い止めに。その後、派遣で働いていたものの収入は月12万円前後に落ち込み、澄子さんの年金から一部を「生活費として借りた」ことが何度かあったといいます。

 

「母さんの年金があると思うと、つい気が緩んで…。だけど、最近になって“これはやばい”と思って、自分から手を引きました」

 

通帳は返したものの、実際には「母の生活費の一部を使い込んでしまった後ろめたさ」もあったのかもしれません。澄子さんは、それでも息子を責めることはしませんでした。

 

「私が何も確認しなかったのがいけなかったんです。通帳を預けた時点で、口出ししないって決めたつもりでした。でも…やっぱり、全部任せたのは愚かだった」

 

現在は、地域包括支援センターの勧めで、成年後見制度の利用も視野に入れて弁護士に相談中です。

 

高齢者の金銭管理に関しては、以下のような方法が推奨されます。

 

●日常的な支出管理は「任意代理契約書」で明文化する

●銀行に「代理人届出」を出して、取引履歴を共有できるようにする

●不安がある場合は「任意後見制度」や「法定後見制度」を活用する

●単なる「親子の信頼」だけでは、曖昧さが大きなリスクになります。

 

澄子さんは最近、近所の信用金庫の職員の助言も得ながらオンラインバンキングを始めました。

 

「難しいけど、せめて自分の目でちゃんとお金を見ておきたい。もう“任せっぱなし”にはしません」

 

通帳も、印鑑も、カードも、今は全部自分の手元にある。それが彼女にとって、安心につながっているのだといいます。

 

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