ASEANで唯一G20加盟国「インドネシア」の大統領が、初めての外国訪問で、米国でも日本でもなく「中国」を選んだワケ

ASEANで唯一G20加盟国「インドネシア」の大統領が、初めての外国訪問で、米国でも日本でもなく「中国」を選んだワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

2010年代半ば、第一次トランプ政権下で米中関係は急速に悪化し、バイデン政権を経ても大きく改善することはなく、米中新冷戦に進む危惧が叫ばれるようになってきました。さらに第二次トランプ政権では、米国自身がこれまでの国際秩序をひっくり返そうとしているかのような動きを見せています。そこで今回は、これからの国際秩序をゼロベースで捉え直し、私たちがどのように振る舞うべきかを考えるため、三尾幸吉郎氏の著書『図解 中国が変えた世界ハンドブック──9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道』(白桃書房)より「インドネシア」を取り上げ、同国の対中・対米姿勢を手掛かりに、まずは政治・社会の特徴を解説していきます。

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「9・30事件」をきっかけに対中関係悪化も、1990年に回復

一方、中国とは古来、交易を通じて深い関係にありました。西洋諸国が進出する前のインドネシアではさまざまな王国が栄枯盛衰を繰り返してきました。中国が15世紀に大航海時代を迎えインド洋に進出した際には、その指揮を委ねられた中国の鄭和がイスラム教徒だったこともあって、インドネシアの諸王国はインド洋と南シナ海を結ぶ中継貿易の拠点として繁栄しました。

 

西洋諸国が大航海時代を迎えると、オランダが1602年に東インド会社を設立、その後インドネシアは植民地化されていきました。周知のとおり日本軍に占領された時期もあります。

 

第二次世界大戦後、日本軍が撤退すると、スカルノらが独立を宣言しましたが、オランダはそれを認めず4年に及ぶ独立戦争となりました。

 

しかし、東西冷戦下でインドネシアの共産化を恐れた米国がオランダに圧力をかけたことから1949年に独立を果たしました。それから1年も経たない1950年4月13日、インドネシアは中国と国交を樹立しました。

 

ところが、1965年に9・30事件と呼ばれる、国軍と共産党の権力闘争が起き、両国の関係は悪化しました。中国は否定しているものの、中国共産党の関与が強く疑われているからです。そして1967年に外交関係を中断することとなりました。

 

その後、東西冷戦が終結に向かうと、1990年に両国は外交関係を回復しました。それ以降の外交は順調で、2005年には戦略的パートナーシップ、2013年には包括的戦略パートナーシップを確立しています。

 

ただし、南シナ海におけるフィリピンやベトナムとの対立を目の当たりにしてきただけに、中国の覇権主義に対する警戒が強いのも事実です。実際、南シナ海のナトゥナ諸島を巡る問題で両国はにらみ合いを続けています。インドネシアが設定している排他的経済水域(EEZ)と中国の「九段線」が一部重複しているからです。

 

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※本連載は、三尾幸吉郎氏の著書『図解中国が変えた世界ハンドブック 9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道』(白桃書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

図解中国が変えた世界ハンドブック 9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道

図解中国が変えた世界ハンドブック 9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道

三尾 幸吉郎

白桃書房

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