年金13万円では「老後の住まい」を維持できない
総務省『家計調査』(2024年)によると、高齢単身無職世帯の消費支出は月約15万円。毎月約2.8万円の赤字が発生しています。
また、厚生労働省『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』によると、入所待機者数が要介護1・2では2.2万人、要介護3以上では25.3万人に上るとされており、“安くて入れる施設”はすぐには見つからないのが現実です。
施設側からは「ご本人にお戻りいただく案もご検討ください」とも提案されましたが、洋子さんはそれを断りました。
「82歳で認知症も進んでいる母を、1人暮らしに戻すなんて考えられません。火の元や転倒も心配で、とても命がもたない」
認知症や視力の低下がある高齢者にとって、自宅での独居は転倒・誤嚥・火災などの事故リスクが非常に高まります。
洋子さんは今、母の一時受け入れ先として短期入所(ショートステイ)を確保し、同時に特養やグループホームの空きを探して奔走しています。
「母の荷物をまとめて、車で一時施設に連れていったとき、“私はもういらないんでしょ”って泣かれて…。それでも、施設の職員さんは“申し訳ありませんが…”と何度も頭を下げてきました」
施設側も悪者ではありません。法的には、有料老人ホームは契約に基づくサービス提供者であり、医療・介護的に限界を超える場合、退去を求める権利があります。
洋子さんはこう語ります。
「母の年金じゃどこにも行けない。私の家でも暮らせない。なのに、“今の場所にはいられない”って。安心して老後を過ごせる場所って、いったいどこにあるんでしょうか?」
老後の「居場所」は、今後ますます社会全体で支えていくべき課題となりそうです。「年金があれば安心」という前提では、生活や介護、住まいの不安に対応しきれない現実が見え始めています。
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