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節約生活を貫いて…夫婦で4,000万円の貯蓄
「正直、何のために我慢してきたんだろう、って思うことがあるんです」
そう語るのは、東京都在住の72歳・中山恵子さん（仮名）。夫の幸一さん（75歳）とともに、年金暮らしをしています。現在の生活は、夫婦合わせて年金月額20万円ほど。それでも、持ち家でローンも完済済み、日々の生活費は切り詰めており、貯蓄を取り崩すこともないといいます。
「うちは子どもがいないぶん、教育費もなかったし、夫もお酒もタバコもしない。旅行も外食も、ぜいたくはほとんどしませんでした」
その結果、退職金と現役時代からの積立を合わせ、現在の貯蓄額は4,000万円近くにのぼります。
「何かを買うとき、夫はよく“老後のためにやめよう”と言っていたんです。たとえば旅行。年に一度くらいどこか行ってみたくても、“いま行かなくてもいいだろう”と」
節約は“習慣”になっていました。日用品は特売を狙い、食費も月3万円以内。外食は月1回あるかないか。友人との付き合いも最小限に抑え、冠婚葬祭以外では交際費もほとんどかかりませんでした。
「当時はそれが普通だと思っていたけど、いざ70を過ぎて、何かしようにも体力もないし、気力も続かない。ようやく時間もお金もできたのに、“何をしたらいいか分からない”んです」
中山さんは、節約生活を「後悔しているわけではない」と前置きしながらも、こうこぼします。
「近所の友だちが、“夫婦で温泉行ってきた”とか、“娘家族と沖縄旅行した”って話をすると、うらやましいって思います。うちはそういう思い出、ほとんどないから」
夫婦ふたりの家には、旅行のアルバムも、記念日の写真も少ないといいます。
「ケンカが多かったとかじゃないんです。仲は悪くなかった。でも、一緒に笑った記憶が少ないなって…」
