「一流」を求め続けた、エリート商社マン
東京都内の大手専門商社に勤務していた佐藤弘さん(仮名・60歳)は、まさに「勝ち組」の人生を歩んできました。40代で年収は1,200万円を超え、最終的には1,800万円に到達。手取りでも1,200万円近くありました。
住まいは中央区のタワーマンションを35年ローンで購入し、悠々自適の生活です。週末は欧州製の高級SUVでゴルフに出かけるのが趣味でした。
「現役時代は、とにかく仕事が忙しかった。家庭のことは妻に任せきりでしたが、これだけ稼いでいれば、老後の心配なんて微塵もしていませんでした」
佐藤さんの妻(58歳)は、専業主婦として家庭を守ってきました。娘二人は私立の中高一貫校から大学へ進学させ、現在は社会人。子育ても一段落し、あとは自分たちのために時間とお金を使う番だ、佐藤さんはそう信じて疑いませんでした。
「子どもが小さい頃は“今が踏ん張りどころだ”と思って我慢できた。でも、気づけば定年目前で、何も自分の手元には残っていない。通帳も見たことがありません」
「月50万以上の生活費」が当たり前になっていた
佐藤さんの定年退職が半年後に迫ったある日、会社で開催されたマネープラン相談会でのことです。FP(ファイナンシャルプランナー)から「現在の貯蓄額と、退職金の使い道を整理してください」とアドバイスを受け、佐藤さんは帰宅後、初めて妻にお金の話を聞いてみました。
「退職金は2,000万円出る予定だ。残っているローンの1,500万円を一括返済して、残りの500万円と今の貯金で、海外旅行でも行こうか」
笑顔で提案した佐藤さんに対し、妻は顔を伏せたまま、震える声でこう言いました。
「貯金なんて、一円もありませんよ」
耳を疑う言葉に、佐藤さんは絶句しました。手取りでも年収1,200万円、月々70万円近くあったはずです。ボーナスだって毎年300万円以上は出ていた。それなのに、貯金がゼロとはどういうことでしょうか。
「娘たちの学費や留学費用だけではなく、ママ友たちとのランチや旅行だって、一回数万円はかかります。あなたの妻として、恥ずかしい格好はできませんから」
崩れ去った「退職金で完済」のシナリオ
妻が差し出した家計簿(という名のメモ書き)を見て、佐藤さんはさらに追い詰められます。
毎月の支出は、食費や交際費で30万円。さらに住宅ローンと管理費、車の車検代や保険料、固定資産税。ボーナスはすべて、それらの補填と「自分たちへのご褒美」という名のリゾート旅行に消えていました。
「住宅ローンの返済が月22万円。それに加えて、タワマン特有の管理費と修繕積立金が段階的に値上がりし、月8万円。さらに固定資産税を月割りにすると約5万円。住んでいるだけで、毎月35万円が消えていたんです」
教育費も追い打ちをかけました。娘二人は小学校から私立の一貫校。学費や塾代、習い事で、ピーク時には年間400万円以上が飛んでいきました。妻(58歳)も「商社マンの妻」としての付き合いがあり、ランチ会やブランド品、季節ごとの旅行は欠かせない。
「住宅ローンの完済どころか、定年後の生活費すら残っていない。退職金でローンを払えば、手元に残るのは500万円。それだけで、30年続くかもしれない老後をどうやって生きていけばいいんだ?」
佐藤さんが愕然としたのは、自分たちが「贅沢をしている」という自覚が乏しかったことです。周囲も同じような生活水準だったため、それが当たり前だと思い込んでいました。高属性ゆえの「生活水準の下方硬直性」が、牙を剥いた瞬間でした。
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