住宅価格の上昇が止まらない中、審査や住宅ローン控除のメリットを得ようと「ペアローン」の利用を検討している夫婦もいるのではないでしょうか。ですが、人生は予想もつかないことが起きるもの。このローンの存在が思わぬ足枷になるケースもあります。見ていきましょう。

“パワーカップル”夫婦、共同でマンションを購入したが…

吉田夫妻(仮名)は、世帯年収約1,800万円のいわゆる“パワーカップル”。夫の拓也さん(36歳)は成長著しいIT企業のマネージャー職、妻の麻美さん(34歳)は外資系金融企業に時短勤務で勤めています。

 

夫婦は3年前、約1億円の新築マンション(高層階)を購入しました。頭金1,000万円を夫婦それぞれが出し、残り9,000万円はペアローンで借り入れ。返済期間は35年で、ローン負担は夫が75%、妻が25%です。

 

ペアローンは住宅ローンの一種で、夫婦など二人で同じ住宅を購入する際にそれぞれが別々にローンを組む方式です。

 

「私はもっと価格の安い家でもよかったのですが、夫が『資産価値のある物件だから』と譲らず、押し切られて。双方収入がありますし、審査や2人分住宅ローン控除のメリットもあるといわれて、ペアローンの利用を決めました」

 

麻美さんはそう振り返ります。とはいえ、ベランダからは横浜ならではの美しい夜景も望め、設備も最新。当時3歳の娘の部屋も賃貸時よりも広くなり、住環境への満足度は高かったといいます。

 

しかし、その直後から夫婦にすれ違いが増えていきました。会社でのポジションが上がったのを機に、拓也さんは帰宅が深夜になり休日出勤が続くように。子育てや家事の負担をすべて麻美さんが負うようになりました。

 

「私だって仕事をしているのに、本当に何もしてくれない。娘が寝たあと、ため息ばかりついていました。夫婦の会話も減り、常にイライラしている自分にも嫌気がさしていました」

 

結局、マンション購入からわずか3年後に、夫婦関係は完全に破綻。離婚を切り出したのは麻美さんでした。

 

拓也さんもその場では了承したものの、結果的に離婚までの道のりは長いものに。その原因となったのが、ペアローンの存在だったのです。

次ページ離婚が進まない…ペアローンの呪縛
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