「おばあちゃんって、お金持ちでしょ?」
「おばあちゃんって、お金持ちでしょ?」
7歳の孫・陽菜ちゃん(仮名)の一言に、長谷川幸子さん(71歳・仮名)は言葉を失いました。
「たぶん、テレビかなにかで老後資金の話を聞いていたんでしょうね。私が“働いてない”のにごはんを作って、おもちゃを買ってあげていることが、不思議だったんだと思います」
陽菜ちゃんは、月に1〜2回、息子夫婦と一緒に幸子さんの家を訪ねてくるのが習慣。孫の成長を間近に感じることは、何よりの楽しみでした。しかし最近は、その訪問が少し重荷になってきていたといいます。
「この間の誕生日、ケーキとプレゼントで1万円。外食に連れていけばそれだけで3〜4千円は飛びます。息子夫婦は『いつもありがとうございます』って言ってくれるけど、うちの台所事情までは知らないから…」
幸子さんの生活は、年金月額およそ20万円。持ち家で住宅ローンは完済しているものの、固定資産税や医療費、食費の値上がりがじわじわと家計を圧迫しています。
「生活費だけなら何とかなるんです。でも“想定外の出費”があると、一気に赤字。孫が来るたびに赤字です、なんて口が裂けても言えませんけどね」
実際、高齢者の経済状況は見た目だけでは判断できません。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2024年)』によれば、70代単身世帯の金融資産の平均値は1,529万円ですが、中央値は500万円と大きな開きがあります。
つまり、一部の資産家が平均値を押し上げているにすぎず、大半の高齢者は“長い老後”を支えるには決して十分とは言えない貯蓄額で日々を過ごしているのです。
しかも、幸子さんのように子どもや孫との交流に「見栄」や「親の役割」を感じてしまうと、思わぬ出費を断れず、生活が圧迫されていく構図も生まれがちです。
