「補助」の利用は、必要性や本人の意向等を考慮して検討
前回の続きです。
⑷補助
ア.申立て
本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分」な場合には、補助を利用することができます(民法15条1項)。具体的には、補助開始申立書(申立書の書式については、下記資料を参照)に必要事項を記載した上、家庭裁判所に補助開始を申し立てることになります。
[資料]補助開始申立書
申立ての流れとしては基本的には成年後見や保佐と同様ですが、補助は、本人の事理弁識能力がそれほど衰えていないケースで利用される制度となりますので、制度利用の必要性や本人の意向等を考慮しつつ、補助を利用するかどうかを検討することになります。
補助開始審判申立書における申立ての理由については、本人の判断能力が著しく不十分であることに関する事情(必要のない高額の呉服を何枚も購入している等)や申立てに至った動機(10万円以上の商品を購入することについての同意権を取得し、必要のない契約を取り消したい等)を具体的に記載することになります。
「同意権・取消権・代理権」を持つ「補助人」
イ.補助が開始された場合
補助が開始された場合、補助人には、個別の行為に関し、同意権、取消権及び代理権が与えられます。そして、被補助人は、同意が必要となる行為について自由に意思決定することができません。補助人の同意権については、「家庭裁判所は、……被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる」(民法17条1項本文)とされていますので、今回のように重要な事業用財産の処分を防止したい場合においては、この同意の審判を取得することになります。
[図表1]法定後見制度の概要
増加傾向にある成年後見関係事件
⑴用語の説明
成年被後見人・・・後見開始の審判を受けた者をいいます。
成年後見人・・・・成年被後見人を監督する者をいいます。
被保佐人・・・・・保佐開始の審判を受けた者をいいます。
保佐人・・・・・・被保佐人を監督する者をいいます。
被補助人・・・・・補助開始の審判を受けた者をいいます。
補助人・・・・・・被補助人を監督する者をいいます。
⑵派生問題
平成24年1月から12月までの1年間における成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始および任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で3万4689件(前年は3万1402件)であり、対前年比約10.5%の比率で増加しています。そのうち、後見開始の審判の申立件数は2万8472件となっており、特に、成年後見が積極的に利用されています。
また、平成24年12月末日時点における、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で16万6289人となっています(以上、すべて最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況平成24年1月〜12月」)。