成年後見か、保佐か? 本人の意向や状況により検討
前回の続きです。
⑶保佐
ア.申立て
本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」な場合には、保佐を利用することができます(民法11条)。具体的には、保佐開始申立書(申立書の書式については、下記資料参照)に必要事項を記載した上、家庭裁判所に保佐開始を申し立てることになります。
[資料]保佐開始申立書
申立ての流れとしては基本的には成年後見と同様ですが、保佐は、本人の事理弁識能力が成年後見の場合よりも衰えていないケースに利用される制度となりますので、本人の意向や状況を踏まえつつ、保佐とするか、成年後見とするかを検討することになります。
保佐開始審判申立書における申立ての理由については、本人の判断能力が著しく不十分であることに関する事情(買物の際に1万円札と千円札の区別が付かない等)や申立てに至った動機(判断能力が不十分な親と同居するため、親の所有する老朽化した自宅を代理して売却したい等)を具体的に記載することになります。
「保佐人」には同意権・取消権・代理権が与えられる
イ.保佐が開始された場合
保佐が開始された場合、保佐人には、個別の行為に関し、同意権、取消権及び代理権が与えられます。そして、被保佐人は、同意が必要となる行為について自由に意思決定することができなくなります。この場合の同意権は、包括的なものではありませんので、成年後見と比べて、保佐人の権限自体は限定される(被保佐人が自由に管理処分できる範囲は広がる)ことになります。
もっとも、「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること」についての同意権は発生しますので(民法13条1項3号)、今回のように重要な事業用財産の処分を防止したい場合には、保佐の制度によってもその目的を達成することができます。
この話は次回に続きます。