人生にとって「価値のある支出」も存在する
本来、老後資金の使い方では、優先順位を決めることが大切です。まず、生活に必要なお金、そして娯楽に使うお金、最後に病気や介護が必要になったときのお金などに分け、それぞれに優先順位をつけながら生活していくことで管理がしやすくなります。
とはいえ、友紀さんのお金の使い方はすべて間違いだったのでしょうか?
美智子さんが大病を患ったことを考えると、結果的には早い段階で旅行を楽しんだり、外食を楽しんだりといったことが、人生の大きな思い出になったはずです。
美智子さんのためのバリアフリーリフォームも、必要であり避けられない支出です。補助金の申請をしなかった落ち度は惜しまれますが、お金のかけすぎというほどのことはありません。
夫婦で意見が割れた息子の住まいの援助について、断ったり金額を抑えたりという選択肢もありました。その場合、「相手の親はあれだけ払ったのに」とずっと引け目を感じ続ける可能性もあります。であれば、「ここでお金を払ったのだから、これ以上の援助はしない」と決めてしっかり線引きをすれば、後悔も残らないのではないでしょうか。
確かに支出は多かったかもしれません。ですが、「悪いお金の使い方ではなかった」「なんとか乗り切れた」と考えることで、残りの人生を夫婦で前向きに過ごせるはずです。
安泰の老後には計画性も必要
ただし、これはあくまで友紀さん夫婦のケースであり、結果論です。夫婦にはまだ1,500万円が残っているので、これから節約を心掛けながら慎重にお金を使うことで、残りの人生を乗り切る余地があります。
一方で、娯楽にお金を使いすぎたり、医療費がかさんだり、見栄を張って子どもに援助しすぎたり。それらすべてが重なるなどして、老後資金を使い果たし破綻しまうケースも実際にあります。友紀さん夫婦も、住宅ローンが残っていれば、そうなっていた可能性があります。
そう考えると、やはり老後資金はなりゆきに任せて使うのではなく、ある程度計画性を持って使うことが大切です。特にこれからは物価の上昇や医療費負担の増加により、必要な支出の順位が変わってくることも予想されます。もちろん趣味や娯楽のためのお金も時には必要ですが、年に1度は貯金額を確認し、今後のお金の使い方を見直すことも忘れてはいけません。
退職金は現役時代のゴールではなく、老後生活のスタート資金です。このことをしっかりと意識し、平均寿命が延びている今だからこそ退職金をどう使うかを最初に考えることこそが老後の安心につながるといえるでしょう。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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