72歳:妻の身体に異変…思わぬ出費
ある日、友紀さんが帰宅すると、リビングで倒れている美智子さんの姿が。すぐに救急車を呼び病院に行ったところ、ギラン・バレー症候群と診断されたのです。
1ヵ月の入院生活を経て、リハビリ病院に移った美智子さん。しかし、自分の力で歩けるようになるまでには約半年間かかりました。医療費は高額医療費制度を利用することで抑えられましたが、保険適用外の食事代や部屋代などが加算され、最終的にかかった費用は約180万円。ちなみに美智子さんは医療保険に加入していませんでした。
美智子さんはリハビリの成果もあり、杖をつけば歩けるものの、時々手足にしびれが出る状態。友紀さんは今後のことを考え、美智子さんの入院中に全面バリアフリーにリフォームすることにしました。
全面バリアフリーのリフォームには約400万円。バリアフリー仕様にする工事は補助金の対象になりますが、友紀さんは事前申請をせずに工事を行ったため、全額自己負担になったことも痛手でした。
また、工事期間は別に部屋を借り、家具などはトランクルームに一時的に保管してもらう必要があります。それらの費用も100万円近くかかり、さらに資産は減少することになったのです。
息子からの相談が追い打ちに
さらに追い打ちをかけたのが、息子からの相談でした。
「子どもも大きくなってきたし、そろそろ家を買いたくて。妻の親が500万円援助してくれると言ってるんだけど、できれば父さん・母さんにも少しお願いできないかな……」
しかし、美智子さんはその時点で通帳残高を確認し、危機感を覚えていました。息子は「うちの両親はお金に困っていない」と思っているようでしたが、実際にはそれほど余裕はありません。
美智子さんは断るか援助額を抑えるべきだと友紀さんに訴えましたが、返答はこうでした。
「息子や孫のためだぞ。相手方が援助すると言ってるんだから、うちも同額を出さないわけにいかないだろう」
こうして友紀さんは美智子さんの反対を押し切り、500万円を援助することに。
さまざまな支出を経て、退職時に3,500万円あった資金はわずか8年で1,500万円程度まで減ってしまったのです。お金が減ると心にも余裕がなくなります。夫婦の会話は少なくなり、一緒にいても重い空気が流れる事態に。
友紀さんは責められているような気分になり、今になって「もっと考えてお金を使っていれば……」――そう頭を悩ませているといいます。
