妻が置いていった“1枚のメモ”
「朝起きたら、家の空気が違っていました」
都内のマンションで暮らす非正規雇用の男性・小野田裕一さん(仮名・40歳)。ある朝、テーブルの上に置かれた1枚の手紙を見て言葉を失ったといいます。
妻の加奈さん(38歳)は、3歳の娘を連れて実家に戻っていました。メモには、こう綴られていました。
「これ以上、自分と娘の食べ物にまで手を出される生活には耐えられません」
裕一さんは、身に覚えがなかったといいます。自分では「食べたかったから食べただけ」「家族なんだから遠慮はいらない」と思っていた行動が、妻にとっては積年のストレスとなっていたのです。
きっかけは、1ヵ月前に娘のために買っておいた“いちご”を裕一さんが何気なく食べてしまったことでした。
「3歳の娘が『あれ、いちごどこ?』と聞いたときの妻の顔が、今でも忘れられません。僕は『買えばいいじゃん』って軽く流してしまったんです。でも、あれは彼女が週末に一緒に作ろうと楽しみにしていた“お菓子作りの材料”だったんです」
その後も、冷蔵庫のヨーグルトや妻が夜勤明けに食べようと買っていたサンドイッチなど、“何となく”で口にしていたものが実は「家族の楽しみ」だったことを知り、愕然としたといいます。
小野田家の家計簿には、毎月14万円以上の食費が記録されていました。
「僕がよく間食するからでしょうね。仕事が不規則で、帰宅が夜11時を過ぎることも多い。『夜食にラーメンや菓子パン』を当然のようにしてきたのですが、それを妻が必死にやりくりしていたなんて考えもしなかった」
妻はパート勤務で月収は約10万円。それでも保育園の送り迎えや家事をこなし、娘との時間を大切にしていました。裕一さんは非正規雇用で手取り18万円ほど。家賃や光熱費は折半としていましたが、家計管理はすべて妻に任せきりでした。
