(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●政策金利据え置きは予想通りだが、前回と同じ2名が反対、展望レポートも目立った変更はなし。

●植田総裁は経済・物価に関する3つの点検ポイントを説明、春闘の重要度が高まっている印象に。

●賃上げの初動のモメンタムに関する十分な情報がそろうと思われる来年1月の利上げ予想を維持。

政策金利据え置きは予想通りだが、前回と同じ2名が反対、展望レポートも目立った変更はなし

日銀は10月29日、30日に金融政策決定会合を開催し、弊社を含む大方の予想通り、無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)を6会合連続で据え置くことを決定しました。今回も、政策委員会の委員9名のうち、7名が賛成票を投じた一方、高田創審議委員と田村直樹審議委員は、誘導目標の0.75%程度への引き上げを求めて反対票を投じましたが、反対票を投じる委員は他にいませんでした。

 

同時に公表された展望レポートでは、2025年度の実質GDPの見通しと2026年度の消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)の見通しが小幅に上方修正されました(図表1)。リスクバランスについて、2026年度の経済見通しは下振れリスクの方が大きく、物価見通しはおおむね上下にバランスしているとの評価は変わらず、物価安定の目標の達成時期も見通し期間後半との見方が維持されました。

 

(出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]日銀政策委員の大勢見通し(中央値) (出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

植田総裁は経済・物価に関する3つの点検ポイントを説明、春闘の重要度が高まっている印象に

植田総裁は記者会見において、今回の展望レポートにおける経済・物価見通しは前回から大きく変わっておらず、「中心的な見通しが実現する確度は少しずつ高まってきている」との判断を示しました。また、これまで挙げていた、経済・物価情勢に関する3つの点検ポイントのうち、1つ目の米国を始めとする海外経済の動向について、関税の影響は今後発現する見通しを改めて示しました。

 

2つ目の関税政策が企業収益や賃金などに与える影響について、植田総裁は「企業の積極的な賃金設定行動が途切れることがないかどうか、もう少し確認したい」と述べており、春闘の重要度が高まっているように見受けられました。そして、3つ目の食料品価格を含む物価動向については、「中心的な見通しに沿って推移しており、現状は(政策が後手に回る)ビハインド・ザ・カーブに陥る懸念が高まっているとは認識していません」と語りました。

賃上げの初動のモメンタムに関する十分な情報がそろうと思われる来年1月の利上げ予想を維持

また、植田総裁は春闘での賃上げ率について、「きちんとした姿を知るまで待ちたい」ということではなく、「初動のモメンタム(勢い)がどういう感じになるかというところをもう少し情報を集めたい」と話し、3月中旬頃公表される連合の春闘回答集計まで待つ必要はないとの考えを示唆しました。春闘などの主なスケジュールは図表2の通りで、来年1月には「初動のモメンタム」に関する十分な情報がそろう公算が大きいと思われます。

 

(出所)日銀の資料や各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]春闘などの主なスケジュール (出所)日銀の資料や各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

そのため、弊社は来年1月に、日銀支店長会議での企業側からの情報も踏まえ、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げが行われるとの見方を維持しています。なお、為替市場では、今回の会合の内容について、「ハト派的」との受け止めが多かった模様で、ドル高・円安の反応がみられましたが、ここからさらにドル高・円安が進行した場合は、10月9日付レポートで解説した通り、財務省の動きが注目されます。

 

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2025年10月日銀政策会合レビュー~ハト派的な内容で円安進行【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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