整理好きだった母の家…タンスの奥を見ると
森下美沙さん(仮名・45歳)は、都内在住のパート勤務の女性。2ヵ月前、郊外で一人暮らしをしていた母・澄子さん(享年78)が、急な病気で亡くなりました。
「倒れてからあっという間で、何も準備ができていなかったんです。母は昔から“死んだ後のことなんて、勝手にしてくれればいい”と言っていて、エンディングノートも遺言も残していませんでした」
葬儀を終え、ようやく落ち着いた頃、実家の整理を始めた美沙さん。ところが、そこで予想外の光景に出くわします。
「思ったよりモノが多くてびっくりしました。母は“整理好き”だと思っていたのに、タンスの奥や押し入れに、古い封書や小物、領収書がギッシリ詰まっていたんです」
片づけ作業も終盤に差しかかったころ、衣類ケースの底から出てきたのは、黄ばんだ和紙に包まれた小さな封筒。宛名はなく、裏に鉛筆で書かれた文字がありました。
【美沙へ 読んでくれてありがとう】
「“ありがとう”? 何これ…」
思わずその場にしゃがみ込み、封を開けた美沙さん。中には折り畳まれた便箋と、現金2万円が入っていました。
便箋には、震えるような文字で、こんな言葉がつづってありました。
「これを見つけるのは、私がいなくなった後でしょう。ごめんね、何も言わずに。いつもあなたにばかり頼って、きょうだいにも甘えられていなかったよね。
これは少しだけど、迷惑かけたお詫びに使ってください。本当は、直接ありがとうって言いたかったけど、うまく言えなくて…」
突然のメッセージに、美沙さんは涙が止まらなくなったといいます。
「母は不器用な人で、あまり感情を言葉にしないタイプでした。私は長女で、母の通院や買い物の付き添いもずっと私ばかり。正直、不満を感じたこともあったけど、あの手紙を読んで……全部が報われたような気がしました」
