●政策金利は6会合連続で据え置きへ、市場では展望レポートや植田総裁の発言に注目が集まる。
●植田総裁の発言は海外経済の動向や関税に関するものが焦点、ただ総じて慎重な見方となろう。
●賃金と物価が相互に上昇する流れのなかでの利上げは高市首相も理解、時期は来年1月とみる。
政策金利は6会合連続で据え置きへ、市場では展望レポートや植田総裁の発言に注目が集まる
日銀は10月29日、30日に金融政策決定会合を開催します。弊社は無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)について、大方の見方と同じく、6会合連続の据え置きを予想しています。市場の関心は引き続き日銀の次の利上げ時期にあり、今回公表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」や、植田和男総裁の記者会見における発言に注目が集まっています。以下、これらの点について整理します。
まず、展望レポートについて、前回7月の会合で公表された経済・物価見通しは図表1の通りです。今回は、2025年度の実質GDPの見通しについて、4-6月期の成長率の上振れなどにより、小幅な上方修正が見込まれます。また、前回のリスクバランスの評価は、経済の見通しが「2025年度と2026年度は下振れリスクの方が大きい」、物価の見通しは「概ね上下にバランスしている」でしたが、これらの評価に変化があるか否かも注目されます。
植田総裁の発言は海外経済の動向や関税に関するものが焦点、ただ総じて慎重な見方となろう
次に、植田和男総裁の発言については、10月3日の大阪経済4団体共催懇談会における挨拶が参考になると思われます。植田総裁は挨拶のなかで、経済・物価情勢を点検するポイントとして、①海外経済の動向、②関税政策が日本企業の収益や賃金・価格設定行動に与える影響、③食品価格の動向の3点を挙げました。記者会見では、それぞれの現状判断に関する発言が、先行きの金融政策を見通す上で、重要な手掛かりになると考えます。
なお、植田総裁は10月16日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後に会見を行い、関税の影響はこれから発現し、下方リスクへの注意が必要である旨の発言をしています。この点を踏まえると、植田総裁が今回の記者会見において、①や②に触れた場合でも、総じて慎重な見方が示され、次回12月の利上げ期待が高まる可能性は低いとみています。
賃金と物価が相互に上昇する流れのなかでの利上げは高市首相も理解、時期は来年1月とみる
市場では、ハト派とされる高市早苗首相が誕生したことで、日銀の利上げ判断に影響が生じるのではないかとの懸念の声も聞かれます。高市氏は10月4日、賃金上昇が主導して需要が増えるディマンドプル型のインフレがベストである旨を述べており、植田総裁は前述の10月3日の挨拶で、賃金と物価が相互に緩やかに上昇するメカニズムは基本的に今後も維持されるとの見方を示しています。
そのため、このメカニズムが維持される流れとなれば、高市首相は日銀の利上げ判断に理解を示すものと思われます。次の利上げ時期について、市場では12月時点での25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ確率は5割弱となっていますが(図表2)、弊社は日銀が慎重に賃上げの機運を確認した上で、年明け1月に、日銀支店長会議での企業側からの情報も踏まえ、25bpの利上げを行うとみています。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2025年10月日銀政策会合プレビュー~今回の注目点を整理する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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