マイホーム購入の際に多くの人は、「業者選び」に頭を悩ませるのではないでしょうか。数多くの業者が存在するため、理想の家づくりを実現してくれる会社を見極めるのは簡単なことではありません。さらに業者のなかでも誰が担当になってくれるかで、家づくりのプランが変わってきます。とくに建設の進行管理窓口となる「担当者」は家づくりの相棒になるため、リテラシーが高く信頼できる人物かどうかを見極めたいところです。本記事では、藤木賀子氏の著書『賢く注文住宅を建てたい人のための家づくりリテラシー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、住宅施工の担当者選定について解説します。

注意しなければならない担当者を見極める

建売住宅だけでなく、注文住宅でも完成見学会が催されることがあるので、時間があれば足を運んでみてもいいと思います。注文住宅の場合、見学会はその家を建てた施主が転居してくるまでの期間限定ですが、家づくりの参考になります。

ある先輩に、こんな話を聞いたことがあります。

「昔は“夜訪”って言ってね、展示場に来たお客様の家に、夜になったら突然訪問して営業してたんだよ」思わず筆者は笑ってしまいました。今ならきっと通報されてしまいます。

ひと昔前の住宅営業は、“押してナンボ”の世界でした。契約を取るためなら手段を選ばず、客の都合より自分の都合を最優先する営業スタイルが当たり前だったのです。実際、不動産の場所が駅から遠いとなれば「緑が多くて静かでいいですよ」と言い、まだほかの人が検討すらしていない物件にも「すぐ決めないとほかの方に取られます」と急せかす――そんな営業トークが常套句でした。

しかし、時代は変わりました。今は情報社会です。少しでも違和感を持てば、誰もがすぐにネットで調べられる時代です。SNSで第三者の意見を聞いたり、AIに相談したりすることができるので、担当者もかつてのようにゴリ押しで契約を取る時代ではありません。

しかしながら、“自分都合”な担当者がいなくなったわけでもないのです。知識がないのにごまかそうとする、約束を守らない、連絡が遅い――リテラシーの低い担当者が担当になると、せっかくの家づくりが施主にはストレスになってしまいます。

納得のいく家づくりをしたいのであれば、担当者の力量を見極める必要が出てきます。それには「質問してみる」のが何よりも効果的です。

「この家のUA値とC値はいくつですか?」
「換気システムは一種ですか?三種ですか?」
「地盤調査はもう終わっていますか?」
「今ならどんな補助金が使えますか?いくらぐらい出ますか?」

これらは、家を買おうとしている人なら当然気になるはずの質問です。施主の質問に対して、担当者はちゃんと答えられるか。もしくは、答えられなかったり分からなかったりした場合に調べて報告してくれるか――ここで判断できます。

ある不動産会社を訪れた客が「この物件の耐震等級はいくつですか?」と質問したら、応対した担当者が「そんなものはありません」と答えたという冗談にもならない話があります。建物は最低でも「耐震等級1」がなければ確認申請は通らず、今では耐震等級3(最も耐震性が高いとされる値)が標準の時代です。筆者にすればもはや“ホラー”といってもいい話ですが、残念ながらこのレベルの担当者が存在するのも事実なのです。

担当者のリテラシーでもう一つ注意しておきたいのが「話し上手なだけの担当者」です。知識はないけれど、トークが上手で、印象はいい。雑談力や雰囲気だけで「この人、頼れそう」と思ってしまうタイプは要注意です。

人当たりが良くても、実は進行管理ができない、責任感がない、肝心なときに対応してくれない……という担当者は少なくありません。施主には聞こえのいい文言を並べる担当者が優秀とは限らず、口だけはうまくても下手をすれば工期を遅らせるようなことをしかねません。結局のところ、大切なのは「誠実さ」です。

知識量ではなく、誠実に対応してくれる人かどうか。約束を守り、質問に対して真正面から向き合ってくれる人かどうか。そして、「この人と一緒に家づくりをしたい」と思えるかどうか。住宅営業の“リテラシー”は、家づくりの質に直結します。まずは「信頼できる人」を見極めることが必要だと思います。


藤木 賀子
住宅コンサルタント
スタイルオブ東京株式会社代表

 

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※本連載は、藤木賀子氏の著書、『賢く注文住宅を建てたい人のための家づくりリテラシー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

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