三女が長年抱えていた「姉妹間の不平等」
それは、20年以上も前のこと。瞳さんだけが200万円の奨学金を利用して大学へ進学したことでした。
当時、将司さんは子会社への左遷で年収が900万円から600万円に減少。妻も病気でパート収入は期待できず、奨学金を利用するしかありませんでした。教育ローンという選択肢も、将司さんには浮かばなかったと言います。
将司さんは「悪いな、瞳。借りたお金は退職金で返す」と約束しましたが、結局その約束は守られませんでした。
奨学金の返済は10年近くに及び、収入が多いとは言えない時期に大きな負担を抱えていた瞳さん。結婚をする際も、奨学金という借金があることに静かに悩んでいたといいます。
一方で、金銭的な問題がないタイミングで大学に在籍し、何の負担もなく大学を卒業していた姉たち。そして、「文句も言わずに返済をしている」と、瞳さんの努力に甘えて、最期には忘れ去ってしまった将司さん。
そんな不平等に、直接不満をいうことはできずにいましたが、瞳さんは長い間恨みを持っていたというのです。
姉妹に亀裂…相続も絡んだ言い争いに
そうした恨み以外に、家族の事情もありました。瞳さんには子どもが2人。長男は私立高校の受験を控えており、教育費用を稼ぐために働かなければなりません。
一方、姉たちの子どもはすでに就職をしており、時間に余裕があります。遠方とはいえ1週間や2週間など交互に将司さんの面倒を見るなど、工夫すれば将司さんの介護もできるはずです。
普段大人しい瞳さんの「介護はできない」という強い意志に、姉2人は相談し、交互に将司さんの家に泊まって身の回りの世話をすることになりました。
しかし、やはり遠方からの通い介護は大変です。しばらくすると、「やっぱり近くに住んでいる瞳がやるべき」「私たちに介護を任せっきりにするなら、瞳は遺産を受け取れないと思ってね」と言い始め、深刻な言い争いに発展してしまったのです。
