コメ・タマゴ高騰、物価上昇続くも「暮らし向き」は改善。物価高との相関薄れる?10月消費者マインドアンケート調査【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年10月22日)

コメ・タマゴ高騰、物価上昇続くも「暮らし向き」は改善。物価高との相関薄れる?10月消費者マインドアンケート調査【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

物価上昇率の勢いは鈍化し、統計上はインフレのピークアウトが見えてきた局面の日本経済。しかし、物価上昇判断DIの最新データが示すのは依然として80台の高水準で、「やや上昇」の回答が多い理想の70台を上回る状況。一方、暮らし向き判断DIは低水準ながら改善。インフレ懸念が暮らし向き判断を悪化させた1年前までと比べ、インフレ懸念と生活実感が乖離する局面になったのでしょうか。エコノミスト・宅森昭吉氏が分析します。

物価上昇DIは「高止まり」続く…10月も80台後半、ウクライナ侵攻前の水準には戻らず

25年10月の物価上昇判断DIは87.0と2ヵ月連続上昇。3月以降8ヵ月連続で80台。

 

消費者マインドアンケート調査から、景気ウォッチャー調査と同じ手法で物価上昇判断DIを作ることができます。物価上昇判断DIは、調査開始の16年9月から22年1月までは60台・70台で安定推移していました。しかし、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見方が強い状況が継続しています。

 

22年10月に90.4をつけたあと、80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月に90.7をつけました。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下しましたが、反転上昇傾向となり、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録。25年3月以降10月までは80台で推移しています。4月87.9から、5月87.0、6月85.8と2ヵ月連続低下しましたが、7月は87.4へと上昇、8月は84.8へ低下、9月85.7、10月87.0と2ヵ月連続で上昇しています。

 

出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表1]物価上昇判断DI 出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
※「上昇する」から「低下する」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDI作成した。

 

回答の内訳比率をみると、25年10月は「上昇する」が55.0%で、9月の51.9%から3.1ポイント上昇しました。ただし、5ヵ月連続の50%台です。4月・5月は60台でした。「やや上昇する」は38.0%で、9月から0.9ポイントとわずかに低下しました。

 

出所:内閣府
[図表2]消費者マインドアンケート調査(試行):物価見通し(1年後)の集計結果推移 出所:内閣府
※一番右の欄の数字は、上が景気ウォッチャー調査と同様に加重平均して求めたDI。同じ欄の下の数字は、「上昇する」と「やや上昇する」の割合の単純合計。

依然として低水準ながら、暮らし向きDIは10月35.0へ改善

25年10月の暮らし向き判断DIは35.0へと2ヵ月ぶり上昇。3月以降は30台で推移。

 

暮らし向き判断DIは、25年5月は28.0と低水準ですが、25.4だった4月から2.6ポイント、3ヵ月ぶりの上昇になりました。6月30.4、7月33.6、8月は38.2と3ヵ月連続上昇で、24年12月の39.0以来の水準になりました。

 

9月は32.0へと5ヵ月ぶりに低下しています。しかし、20台になることはなく、3月以降の30台を維持。10月は35.0へと3.0ポイント上昇しました。

 

出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表3]暮らし向き判断DI 出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
※「良くなる」から「悪くなる」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDI作成した。

 

物価高騰と「暮らし向き」、相関関係に変化の兆し?

最近は、物価見通し判断上昇が、暮らし向き判断悪化を招くという相関関係が希薄に。

 

内閣府「消費者マインドアンケート調査」の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は、16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でした。しかし、21年9月から25年10月までの最近の4年2ヵ月間では▲0.6723のマイナスで逆相関になっています。

 

24年11月から25年10月までの1年間は、物価上昇判断DIが84以上の高水準に上昇しており、暮らし向き判断DIは20台・30台の低水準である状況には変わりありません。物価見通し判断が暮らし向き判断の足枷になる状況が継続しています。

 

ただし、このところの相関係数の絶対値が縮小気味だったので、21年9月から25年10月までを2つの区間にわけてそれぞれの相関係数を求めました。21年9月から24年8月までの3年間では▲0.7378と、物価見通し判断が高くなることで、暮らし向き判断が悪化する傾向が強かったことがわかります。一方、その後の24年9月から25年10月までの1年2カ月間の相関係数を求めると、▲0.4734で明確な相関があるかどうかわからない状態になっています。

 

高騰していたコメなどの価格が高水準ながら一応の落ち着きがみられるようになってきていることで、暮らし向き判断との相関が薄れてきた感じがします。 

 

出所:内閣府
[図表4]消費者マインドアンケート調査(最近4年2ヵ月間) 出所:内閣府
※相関係数:▲0.6723

消費者物価指数、8月は2%台に鈍化…政府のエネルギー支援策が影響

8月全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+2.7%と7月の+3%台から+2%台に鈍化。「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による押し下げ効果が下落の主因。

 

9月の全国消費者物価指数の公表日は10月24日なので、公表済みの8月の全国消費者物価指数の動向を振り返ってみます。

 

8月の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+2.7%と7月の+3.1%から鈍化したものの48ヵ月連続上昇になりました。9ヵ月ぶりに+2%台に鈍化しましたが、8月のエネルギーの前年同月比が▲3.3%と7月の▲0.3%から下落率が拡大したことが主因です。8月支払い分から夏場の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による押し下げ効果が出て、その寄与度が▲0.26%になりました。

 

また、8月の生鮮食品の前年同月比は+2.8%と7月の+3.3%から上昇率が鈍化し、前年同月比寄与度差は▲0.02%の鈍化要因になりました。

 

身近な商品価格の高止まりが続いていますが、どんどん物価が上昇するという局面からは変化しているように感じます。

 

出所:総務省
[図表5]全国消費者物価指数・前年(同月)比 出所:総務省

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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