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1日1日の変動なんてどうでもいい
週末、2人は晴れやかな気持ちで三福に行った。
「こんにちはーっ」
今週の株価の急上昇を知っている3人は、信二たちの声が元気なことにすぐに気付いた。
「おう、だいぶ儲かったか?」エビ銀が聞く。
「はい。おかげさまで、早速25万円も含み益ができました」
「ほう。600万円の投資で25万の儲けなら、1週間で4%以上の儲けか……。結構なもんだね」
「はい。特にオーバーロードハウスが、急にすごく上がってくれて。この株だけでも20万円も儲かっています」信二たちの喜ぶ姿に対し、おもむろにエビ銀が口を開く。
「なぁ、マハ・カラ、お前、今週、いくら儲かった?」
「えっ、ボクですか、ちゃんと調べていませんけど、たぶん、8億くらいです」
これには、信二も姫奈も固まった。
「えっ、マハ・カラさん、そんなに儲かったんですか?」
「うん? まぁ、そんなもんだよ。投資額が違うからね。別にいつものことさ……」
エビ銀がまた聞く。
「先週はどうだった?」
「先週ですか、6億ほど減ってました」
「そんなもんだろうな……」
金額もさることながら、それが、さも普通の出来事であることのように自然にふるまう。そんな様子をみて、信二は何かを悟った。
「それって、普通のこと、なんですよね」
「ああ。普通のことさ。いちいち、喜んだり、悲しんだりしない」
サラ柴も冷たく笑う。
「その程度のことに、いちいち感情を動かされていたら、株なんて続かないでしょうね……」確かに、これまで何度もここに来たが、彼らから、今週、株でいくら儲かったとか、いくら損したとか、そんな話は微塵も出なかった。
ようやく、エビ銀も言いたいことがまとまってきた。
「信ちゃん、姫ちゃん、いいか、よく聞け」目が真剣だ。
「この前も言ったけど、株価をいちいち気にするな。本物の成長株を買うことができたなら、1日1日の変動なんてどうでもいい。3年とか5年とか、場合によってはもっと長くその会社を信じて持ち続けろ。3倍とか5倍とか、場合によっては、それ以上の大上昇を狙っていくんだ。その長期の上昇にとって、最も重要なのは、その会社が本当に成長するかどうかだ。今週上がったとか、昨日は下がったとか、そんなもん関係ないんだ。もし、上がらなければ何年でも持ち続けろ。上がらなければ何年でも応援し続けろ。それが本当の投資だ」
25万円の含み益で有頂天になっていた自分たちが恥ずかしくなってきた。サラ柴も続けた。
「確かに株価は毎週、毎日、毎時間、目まぐるしく変動するわ。けど、その大半は、その企業の成長とは無関係な要因で動いているの。為替がどうとか、景気がどうとか、あるいは、他の投資家が心理戦や相場操縦を仕掛けてくることもある。そういうのにいちいち惑わされないことが大事なの」
「とにかく、良い株を適正価格以下で買う。そのことだけを考えろ。逆にそれ以外のことについては、精いっぱい、鈍感になれ」
正直なところ、この時、信二も姫奈もその真意はわからなかった。しかし、エビ銀のあまりの気迫に押されて、同じ言葉が出た。
「わかりました」2人の返事を聞くと、3人はいつものポンコツに戻った。
「じゃあ、今日は、焼酎にするか? 鹿児島のうまい芋焼酎が手に入ったぞ」今日も酒代はすべてエビ銀のおごりだ。
