父の入院時、弟は「忙しくて行けない」と言うばかりで…
「気づいたら、すべて私の名前で契約していたんです」
そう語るのは、地方都市で暮らす木下陽子さん(仮名・50歳)。父が脳梗塞で倒れたのをきっかけに、実家近くで一人暮らしをしていた陽子さんは、急きょ在宅介護を担うことになりました。
母はすでに他界。兄弟は、東京で働く弟が一人だけです。父の入院時、弟は「忙しくて行けない」と言うばかりで、すべての手続きは陽子さんが対応。退院後も、デイサービスの手配やケアマネジャーとの面談、買い物の付き添いなど、日々の世話が続きました。
「弟には何度か連絡しましたが、『ありがとね』『俺も金なら出すよ』というだけ。結局、介護保険の限度額を超えた部分も私が負担していて…」
その後、父が陽子さんの口座に年金を振り込むようにしたいと言い出し、通帳を開いたときのことでした。
「なぜか、弟名義の入金が毎月1万円だけあって。それを“生活費の支援”って言っていたんですよ。でも、父の介護用品や医療費、タクシー代などで、私が出しているお金は月に3万円以上…。それを当たり前と思われていたのがショックでした」
通帳の明細にはっきりと現れた金額の差に、陽子さんは「介護って、心だけじゃなくお金も吸われるんだな」と痛感したといいます。
介護にかかるお金は、自己負担の範囲やサービス内容によって異なります。要介護2で在宅介護の場合、デイサービスや訪問介護の自己負担額は月1.5万〜3万円程度が目安とされます。さらに、オムツ代・医療費・交通費・家事負担の増加など「見えにくい出費」が積み重なるのが実情です。
介護費用については、「扶養義務」が定められており、親の生活費や医療費を負担する責任は、子ども全員にあります。ただし、実際には「同居している人が全額負担」「一人に押しつけられる」といったケースが多く、トラブルのもとになることも。
