「そこは掃除しなくていいから」と言い続けた母
埼玉県に住む村井真理子さん(仮名・48歳)は、1年前に母・芳江さん(享年80)を亡くしました。実家は築50年以上の木造住宅で、現在は空き家状態。葬儀を終えた後、兄妹3人で家の整理を進める中、長年“開かずの間”として封印されていた2階の一室が話題に上りました。
「母は、私たちが実家に集まっても、絶対に『あの部屋には入らないで』って言うんです。『掃除もしなくていいから』と…何かあるのかなと思いつつも、無理に開けることもなかったんです」(真理子さん)
葬儀が終わり、家を売却するか解体するかを検討する中で、「中も確認しておかないといけない」という流れになり、兄と弟とともにその部屋の鍵を開けたといいます。
「扉を開けた瞬間、空気が違ったんです。湿気と埃の匂いがして、でもその中に、少しだけお花のような香りも残っていた。母が何十年も前に使っていた香水の匂いだったと思います」
部屋の中には、古い鏡台、木製のタンス、そして布がかぶせられた裁縫台がありました。どうやら若い頃に母が「自分だけの趣味の空間」として使っていた部屋のようでした。
「驚いたのは、タンスの引き出しの中に大量の現金がしまってあったことです。全部で100万円を超えていて…。しかも、どこにも書き残されていない。通帳にも記録がない“現金のへそくり”でした」
さらに、タンスの奥から出てきたのは、10年ほど前の日付が記された「借用書」の束。相手の名前は、知らない男性のものでした。
「金額は1回につき数万円から十数万円で、『近日中に返済します』と書かれていました。筆跡から見て、相手の男性が書いたようでしたが、なぜ母がこれを保管していたのかは不明です」
後日、兄が法務局で調べたところ、相手の男性は過去に近隣の不動産トラブルで新聞沙汰になっていた人物だったことが判明します。
「もしかしたら母は、お金を貸したまま、返してもらえなかったのかもしれません。遺言書もなかったので、私たちも誰にどう伝えればいいのかわからなくて…」
