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退職祝いの恐怖のプレゼント
Aさんは65歳で完全に仕事を辞め、これからは妻とゆっくり過ごそうと考えていました。「いままでなにもしてやれなかったから、まずは旅行にでも誘ってみようか……」そんなことを考えながら、最後の仕事を終えて帰宅します。
玄関を開けると、妻が花束を片手に出迎えてくれました。驚くAさん。――しかし、そこで妻の口から出たのは、思いもよらない言葉でした。
「長年お疲れ様でした。これからの人生は、どうか自由に過ごしてください。私はもう、空気のように扱われるのは耐えられません。残りの人生は、自分のために生きたいです」
花束と一緒に渡された紙を見ると、それは「離婚届」でした。
妻は律義にも、Aさんの退職の日まで待って宣告したのでした。これまで不満をいうこともなかった妻からの突然の申し出に、Aさんは離婚するつもりはないと反論。しかし妻の意思は固く、応じなければ調停を申し立てるといいます。
要求されたのは、年金分割と財産の半分。「浮気をしたわけでもなく、ただ家族のためにがむしゃらに働いてきただけなのに……なぜ?」Aさんは納得できず、妻に問いただしました。
妻の言い分はこうでした。結婚当初から夫の愛情を感じられず、家庭を顧みられることはなかった。休みの日も一緒に過ごすことはなく、常に無関心。妻の誕生日も結婚記念日も覚えていない夫に、心が壊れてしまった、と。
「20年以上」の夫婦が別れる、熟年離婚の現実
Aさんのようなケースは、決して珍しいことではありません。定年退職を機に、離婚を切り出されるケースとして、内閣府の男女共同参画白書 令和4年版より夫婦関係が破綻した理由として「性格の不一致」が男女とも最も多く、女性では「精神的な暴力(モラハラ)」が続きます。Aさんの「無関心」も、これに当てはまるといえるでしょう。
また、厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」では、同居期間が「20年以上」の夫婦の離婚率は上昇傾向にあり、2020年には全体の21.5%に達しています。長く連れ添った夫婦が別れを選ぶ「熟年離婚」は、いまや社会的な現象なのです。
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