甘くない現実…年金を使い果たし、貯金も切り崩すように
けれど、現実は甘くありませんでした。
1人のときは月3万円以下で済んでいた食費が、4人分になれば倍どころではありません。特に育ち盛りの孫・剛くんはサッカー部で、食べ盛り。「カレーなんて、鍋いっぱい作っても次の日には空っぽですよ」と美津子さんは苦笑します。さらに、電気代、水道代、ガス代は想像以上に高額です。
追い討ちをかけたのが、剛くんの進学問題でした。大学で勉強をして将来は建築士になりたいという希望がありましたが、雄一さんはいまだ再就職のめどが立たない状況で、進学費用を幸子さんのパート代だけで賄うことはできない状況です。
剛くん自身は奨学金を利用し、不足する部分については空いた時間でアルバイトをすると主張。家にもお金を入れると意気込みます。
それで学業が疎かになっても本末転倒だと幸子さんは悩んだといいますが、最終的には、給付型と貸与型の奨学金を併用して進学を目指すことになった剛くん。なりゆきを見守っていた美津子さんも、「よかった」と安心したといいます。
ところが、この進学問題も美津子さんのお財布に影響を与えます。「母にはこれ以上お金のことを言えない」と、剛君は美津子さんに参考書代や交通費などを頼むようになったのです。
美津子さん自身、美容院に行ったり、たまにはお出かけをしたりと、最低限の楽しみは必要です。結局、月12万円の年金では到底足りず、1人なら一生分足りると思っていた1,500万円の貯蓄は、どんどん減っていく状態に。
美津子さんは、厳しい生活をする息子一家に同情しつつ、自分の暮らしにも焦りを募らせるようになっていきました。
