「相談したいことが…」Facebookに届いたメッセージ
その後、堀内さんは転職し、関さんとも会うことはなくなりました。しかし3年後、久しぶりにFacebook経由で関さんから「相談したいことがあるんです」と連絡があり、飲みに行くことになりました。
関さんはこう切り出しました。「転職を考えているんです。でも、正直迷っているんです」
堀内さんは思い切ってこれまで思っていたことを伝えました。「君は新規事業で素晴らしいリーダーシップを発揮した。正直驚いたよ。君は評価されるのに時間がかかるタイプなのかもしれないね」
その言葉に関さんは「えっ、僕ってそんなふうに見えるんですか?」と驚いた様子。
「やっぱり自分のことを全くわかっていなかったか」と思いつつも堀内さんはこう続けました。「君は普通にしていると、積極性が見えないし、気概も感じられないから、プロジェクトにアサインされるまでに至らないんだよ」
関さんは苦笑しながら言いました。「確かに……。僕も、神様は不平等だと思っていました。僕にはチャンスが少ないんです」
堀内さんは関さんに「いいタイミングで引っ張ってくれる人がいればいいけれど、そうでないとなかなかレールに乗れないタイプなのかもしれないね」と伝えました。
すると、関さんは「でも、性格は変えられないんです。実は、人材紹介系の大手から新規事業開発の誘いを受けていて、相談したかったんです」と本題を切り出しました。
話を聞くと、その仕事はほぼ1人で任される部署で、自分で好きなように進められてマネタイズまで責任を持てる環境でした。関さんにとっては、すでにお膳立てされた状態で、挑戦できるチャンスが整っていたのです。堀内さんは「だったらいけるかもしれないな。挑戦してみたらどうかな」と関さんの背中を押しました。
47歳、年収3,000万円。環境次第で人はここまで変われる
信頼できる上司であった堀内さんに背中を押されたこともあって、関さんはその後すぐに転職。その会社でも新規事業を立ち上げ、事業は軌道に乗り、メディアにも取り上げられる存在になりました。その数年後、また彼から相談がありました。
「投資会社から『社長になりませんか?』とオファーがきたんです。雇われ社長で、代理店事業です。でも、正直、得体が知れないんです」
関さんの話を聞いて堀内さんは「もしかしたら君は、常人が考えるレールに乗るよりも、あり得ないレールに乗るほうが向いているのかもしれないね」とアドバイス。
結局、関さんはその道を選び、会社の業績もアップ。敏腕社長としてさらにメディアに取り上げられるようになったのです。現在、47歳になった関さんの年収は3,000万円に達しています。堀内さんはこう語ります。
「人は環境と役割次第でここまで変わるのか、と彼の姿を見るたびに思わされます」
もちろん、関さんが歩んできた道は上司の堀内さんから見ても、順風満帆ではなかったと強調します。社内で埋もれた時間も長く、堀内さんが「評価されるのに時間がかかる」と言っていた通りです。しかし、環境が変わり、自由を与えられたとき、眠っていた力が一気に解放されたのです。
「ネットニュースの記事で君のインタビュー記事を見たよ」
堀内さんが久しぶりに関さんにメッセージを送ると、関さんから速攻でこんな返事が返ってきました。
「ありがとうございます! 今の僕があるのは堀内さんのお陰です。転職に迷ったときに勇気を出して送ったFacebookのメッセージが僕の運命を変えたんです」
元部下である関さんからのメッセージに、堀内さんは胸がいっぱいになったといいます。
「私は思うんです。ババを引くのか、引かないのか、考えて動いている人ほどババを引きやすい。そういう人は、ババの存在を知っているんです。関君の場合は、ババの存在を知らないからこそババを引きづらい。打算で動いていないからこそ、ババをスルーするできるんです」
堀内さんは関さんを見るたびに、そんなことを思うそうです。
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