制度はある、でも「助けを呼べない」高齢者たち
健太さんの前で、母は「そろそろ誰かに来てもらったほうがいいのかも」とつぶやきました。介護保険制度を利用すれば、要支援・要介護の認定を受けたうえで訪問介護やデイサービスが利用できます。
しかし、最寄りの包括支援センターまでの距離が遠く、本人たちも「どこに相談していいかわからない」と話していました。
また、地域包括ケアシステムが整備されている都市部とは異なり、地方では人手や資源の不足から、支援が行き届かないエリアもあります。
帰り際、母はぽつりとこう言いました。
「本当はね、孫の声が聞きたくて仕方なかったの。でも、みんな忙しいし、こっちに呼ぶのも悪い気がして」
それが、両親の“理想の終の棲家”に秘められていた、たったひとつの願いでした。
「元気なうちにやりたいことを」――その言葉の裏には、「誰にも迷惑をかけたくない」という親心と、「でも、誰かにそばにいてほしい」という本音が隠れていたのです。
高齢期の移住は、資金面だけでなく、地域性・健康・家族関係など、多くの視点から慎重に検討すべきです。夢を叶える移住が、「静かな孤独」に変わってしまうこともある――そんな現実を、子世代も知っておく必要があるのかもしれません。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
