「老後はまだ始まったばかり」——夫婦の決断
現在の日本では、親世代のほうが相対的に経済的余裕のあるケースが少なくありません。団塊ジュニアやバブル世代を中心とするシニア層は、安定した就労期間と退職金、年金、資産運用などを通じて、ある程度の蓄えを持っている一方で、子ども世代は非正規雇用や賃金の伸び悩み、子育て費用の増大などから、家計が厳しい状況に置かれていることが多いのです。
そうした中で、親に頼ることが“前提”のようになってしまう関係性が、家族内で無意識のうちに生まれることもあり、親の老後設計に思わぬ影響を与えるケースも出てきています。
また、配偶者との関係や育児疲れから実家に“逃げ込む”子世代の事例も増えており、「親に相談するより先に帰ってくる」という事後報告型の同居も珍しくありません。
その後、娘と夫婦で話し合いを重ねた結果、理沙さんは近隣の市営住宅へ仮住まいし、一定期間のみ育児支援のために週末だけ実家に通うという“中間案”で落ち着いたといいます。
「親として放っておけない。でも、子どもたちの人生を“自分たちの老後”に食い込ませてはいけないと思ったんです」
由美子さんは、LINE通知のたびに「今度は何を言われるんだろう」と不安を覚えるようになった時期もあったといいます。
「お金はある。でも、時間と気力は有限。“自由な老後”は、お金だけで守れるわけじゃないと、あのLINEで思い知らされました」
核家族化が進む中でも、老親の暮らしに子ども世代が介入する場面は今なお多く見られます。親子間で金銭的支援・居住・育児の協力を求める場面が増える一方で、老後設計が“家族の想定外”によって揺らぐリスクも見逃せません。
大切なのは、助け合いの気持ちと同時に、生活の境界線を明確にすること。それは冷たさではなく、長く穏やかな関係を保つために必要な“親の選択”なのかもしれません。
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