高騰する金、個人投資家からも熱視線
田中貴金属工業(東京)が発表した店頭小売価格は、1グラム当たり2万18円となり、国内の金相場では初めて2万円の大台を突破した。また、買い取り価格も1万7,809円と過去最高を記録した。個人投資家の間でも注目度は高まり、短期的には高値での売買が活発化している。
楽天証券コモディティアナリストの吉田哲氏はこのように説明する。
「国内の金価格だけを見ると、『なんでこんなに上がっているの?』と思うかもしれませんが、実際には海外の金価格やドル円の動きが大きく影響しています。基本的には海外のドル建て金価格を円に換算して算出されており、海外市場の動向が直接的に反映されます。そのため、海外で金価格が上昇すれば、国内の値段も上昇する傾向があります」
日本の店頭価格は、国内の売買だけで決まるわけではないのだ。さらに、価格上昇の短期的要因と長期的要因について、このように説明する。
「短期的には、ドル建て金価格の変動と円相場の動きが国内価格に強く影響します。たとえば、8月下旬以降はドル建て金価格の上昇と円安が同時に進んだため、国内価格がぐっと高くなったという状況です。一方で長期的には、金の需要、中央銀行による買い入れ、世界の民主主義の後退や分断のリスクなどの土台に支えられていると考えられます。短期と長期、両方の要因を受けて価格が動いています。単なる投機的な動きだけで価格が決まるわけではありません」
海外市場とドル円相場の影響/地政学リスクと金融政策の影響
FRBの利下げ観測も、金への資金流入を後押ししているようだ。FRBの利下げ観測を一因としたドル建て金価格の上昇と相まって、国内市場でも金への関心が高まっている。
「FRBが利下げを実施する、もしくは利下げ期待が高まると、米ドルを保有するメリットが薄まる懸念が強まり、金に資金が流れる場合があります」(吉田氏)
中東情勢やウクライナ情勢など国際的不安要素も、金価格を押し上げる背景となっている。
「地政学リスクも大きいでしょう。中東やウクライナ周辺の緊張などが、海外の金価格を押し上げ、それがそのまま国内価格に反映されています」(吉田氏)
金以外の貴金属市場の動き
金以外の貴金属市場も活況を呈している。銀は2025年9月22日時点で1オンス=43.7727ドルまで上昇し、iシェアーズ・シルバー・トラスト関連のオプション取引は2024年4月以来の高水準となる120万枚に急増した。プラチナ価格について、吉田氏は下記のように指摘する。
「プラチナも金に影響されやすく、金が上がれば反応するし、FRBの利下げや地政学リスクが絡むと反発しやすくなります。産業用需要もあるので短期的には動きやすいといえます」
価格上昇の論拠と今後の見通し/下落する場合はどんなシナリオ?
金価格が上昇し、高くて手が出せないという個人投資家の声もある。吉田氏は「今の値上がりは背景が説明できる範囲内で、根拠のないバブル的な熱狂とは違う」「需要や政策、地政学リスクなど複合的な要因が価格を支えている」との見解だ。
逆に、金価格が下落するシナリオとしては、地政学リスクの沈静化や米国の利下げムードが利上げに傾くことが重なる場合だという。
吉田氏によれば、米国の金利低下は利息を生まない金にとって買い材料であり、世界的な不安要素も相まって、当面は高値圏での推移が続く可能性が高く、投資家の間では、安全資産としての金の需要が一段と高まる見通しのようだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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