年金事務所で絶句…「なにかの間違いでは?」
「私ひとりになっても、遺族年金を受け取れると思っていたんです」
そう語るのは、68歳の松本さつきさん(仮名)。昨年、75歳の夫・義夫さん(仮名)を心筋梗塞で亡くしました。義夫さんは大手メーカーに40年近く勤め、65歳で定年退職。その後も厚生年金に加入できる形で再雇用され、70歳まで働いていたといいます。
「家のローンも終わっていたし、貯金も1,000万円ほどあったので、年金さえきちんと出れば、質素に暮らせば何とかなると思っていました」
夫の四十九日が過ぎ、少し落ち着いたタイミングで、さつきさんは最寄りの年金事務所に赴きました。目的は「遺族厚生年金の手続き」。しかし、窓口で返された一言に、思わず耳を疑ったといいます。
「申し訳ありませんが、遺族年金は出ません」
あまりにあっさりとした説明に、「なにかの間違いではないですか?」と聞き返したそうです。ですが、職員が示した加入記録には、「受給資格の発生しない」可能性を示すデータが並んでいました。
遺族厚生年金は「自分の老齢年金」との兼ね合いによって、金額が調整される仕組みになっています。
典子さん自身、長年正社員として勤務していたことから、老齢厚生年金を月に約15万円受給していました。一方、夫・義夫さんが亡くなった後に受け取れるはずの「遺族厚生年金」の見込み額は、月に10万円ほど。
この場合、典子さんは「自分の年金額が遺族年金を上回っている」とみなされ、調整の結果として「遺族厚生年金は支給されない(=実質ゼロ)」という扱いになるのです。
つまり、“夫が厚生年金に加入していたから受け取れるはず”と思っていても、自身の年金額によっては、遺族年金の恩恵を受けられないケースもあるというわけです。
