“気丈な母”が遺したもの
「このお金、葬式にでも使って。ご自由にどうぞ」
封筒の裏側には、そんなメモが貼られていました。
「最後まで、自分のことは自分でっていう人でした」
綾子さんは母の通帳を見ながら、思い出すように語ります。最終残高は2,130円。公共料金はすでに滞納状態でした。
「私、母の誕生日に何も送ってなかったなって…。一緒にごはん食べに行ったの、いつだったろうって。後悔しかないんです」
日本では、65歳以上の高齢者のうち29.6%が「単身世帯」とされており、その割合は年々増加しています(総務省『令和2年国勢調査』より)。中には、制度や援助を“使わないまま”人生を終える人も少なくありません。
「お母さん、ありがとうね」
綾子さんは小さくそうつぶやきながら、封筒とメモを小箱にしまいました。
そして、つぶやきます。
「今度は、私が誰かに迷惑をかけないようにって思うけど……少しは、誰かに頼ってもいいのかなって、初めて思いました」
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