それでも「正解だった」と思える理由
それでも、川口夫妻は「やっぱり来てよかった」と口を揃えます。理由は「自分で選んだ」という実感と、経済的不安からの解放です。
「住まいにお金をかけず、年金(夫婦で月約24万円)と貯金の取り崩しで、あまり節約せずに生活できるのは大きいですね。老後破産のリスクは減ったと思います」(篤さん)
総務省「家計調査」(2024年)によれば、高齢夫婦世帯の平均消費支出は月25万円前後。地方での自宅暮らしなら、支出を月15~18万円程度に抑えることも可能で、「年金の範囲内で生活できることが安心感につながる」という声は多くあります。
物理的な持ち物だけでなく、「関係」や「自由」さえもある程度“手放す”ことで、ようやく実現するのが“理想の老後”なのかもしれません。
「なんでもかんでも叶えようとしたら、結局“中途半端”になる気がするんです。だから私たちは、『持たないこと』を選んだんです」(由美子さん)
少子高齢化、都市部の住宅価格高騰、長寿化、孤立のリスク――こうした背景の中で、地方移住は“選ばれた人だけの特別な選択”ではなく、経済的にも精神的にも納得感のある“縮小型の幸せ”として、今後さらに広がっていくかもしれません。
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