(※写真はイメージです/PIXTA)

「都会を離れて、自然の中でゆったり暮らしたい」という思い。特に定年後の60代夫婦にとって、家賃・物価の安さ、広い家や自然環境、地域コミュニティといった“地方の魅力”は、老後の理想像として語られることも少なくありません。しかし、その一方で、生活インフラや交通アクセスの問題など、“実際に住んでみてから”気づくギャップも存在します。今回は、地方に移住したある60代夫婦の「リアルな声」から、見落としがちな落とし穴に迫ります。

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    「移住支援金は出た。でも、ずっと住めるとは限らなかった」

    宮田さん夫妻は、当初「移住支援金(最大100万円)」の対象となり、住宅購入に関しても自治体のリフォーム助成金制度を利用しました。

     

    ただ、こうした支援制度は「移住直後の導入支援」が主であり、移住後の生活変化や高齢化に応じたサポートまでは手が届かないのが現状です。

     

    特に交通インフラの脆弱な地域では、「クルマに乗れるうちはいいけれど、運転できなくなった瞬間に生活が成り立たなくなる」というリスクを見落としがちです。

     

    「支援金で引っ越しはできても、“暮らし続ける力”は自分たちで作らなきゃいけないんですね…」

     

    高齢者の交通弱者化に対応する制度や取り組みは少しずつ始まっています。

     

    地方自治体によって導入が進む施策例:

     

    ●「移動支援バス」や「オンデマンド交通」(事前予約制の乗り合いタクシー)

    ●買い物代行サービスや移動販売車の導入

    ●見守り・通院送迎を含む地域包括ケアの拠点整備

     

    ただし、これらの取り組みは自治体によって対応に差が大きく、居住地によって「全く利用できない」ケースもあります。

     

    宮田さん夫妻は、最近、隣の“駅徒歩圏内の小規模な市街地”に転居を検討しはじめました。

     

    「移住そのものは後悔していません。むしろ、あの自然や人とのつながりは、都会では得られなかったもの。でも、“車がない生活”は想像以上に不便でした」

     

    「“自然がある場所”ではなく、“最後まで暮らせる場所”を選ぶべきだったのかもしれませんね」

     

    地方移住には多くの魅力がありますが、“住んで終わり”ではなく、“住み続けられるか”を見極める視点が求められます。特に、高齢期に入る60〜70代にとっては、

     

    ●医療・買い物・交通といった生活インフラ

    ●運転卒業後の代替手段

    ●地域の支援制度の継続性と実効性

     

    といった要素が「老後の暮らしやすさ」を左右します。

     

    「移住して良かった」からこそ、見えてくる「もしも」の備え。理想だけでは乗り越えられない現実との折り合いが、地方移住には必要なのかもしれません。

     

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