空き家の多くは、富裕層保有の「別荘」「セカンドハウス」!?
国内の空き家の多くは相続によって取得された住宅であり、特に富裕層世帯が資産として保有する「別荘」「セカンドハウス」が長期間活用されずに残るケースが目立つことが、国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」で明らかになった。
空き家の約6割が相続による取得で、その多くは1980年以前に建築された古い住宅であり、所有者の死亡を契機に空き家化している。相続前に資産管理や活用の対策を講じていた世帯は2割強にとどまり、対策の有無によって空き家の活用状況には大きな差が生じることも分かっている。政府は法整備や相続登記の義務化で対応を進めているが、富裕層世帯における事前の資産管理が空き家の適切な活用に直結する状況である。
空き家の約6割は相続で取得され、多くが1980年以前の建築物
国土交通省の調査によると、空き家の約6割は相続によって取得されたもので、その多くは1980年以前に建築された古い住宅である。所有者の死亡を契機に空き家となるケースが約6割を占め、特に富裕層世帯において高額資産として保有されてきた住宅が空き家化している実態が浮き彫りとなった。
調査対象は、2023年の「住宅・土地統計調査」で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯。1万3,268世帯に調査票を送付し、6,294件の有効回答を得た。
相続問題に詳しい山村暢彦弁護士は、相続に起因する空き家が全体の約6割を占める現状についてこう指摘する。
「弁護士としての実務経験から見ても、空き家の6割が相続に関係しているというのは納得できる数字です。典型例は、子どもがいない夫婦の相続で、多数の兄弟姉妹やその甥姪に権利が分散し、解決費用がかさむため放置されるケースです。管理コストや責任が重いため、相続人全員が相続放棄して国庫に帰属する事例も一定数あるでしょう」
調査では、相続前に住宅活用や資産管理の対策を講じていた世帯は全体の23%にとどまり、最も多い対策は「被相続人との話し合い」(16.7%)、続いて「遺言作成支援」(1.8%)や「家族信託・後見制度の活用」(1.3%)だった。対策を行わなかった場合、活用せず放置される割合は対策済みのケースに比べて約1.5倍にのぼる。富裕層であっても資産管理が不十分だと空き家が長期間残る傾向が見られる。
対策を講じた世帯が23%にとどまる点については「『空き家対策=相続対策』になると思いますので、この割合も理解できます。相続や空き家の問題と向き合うことは『死』と向き合うことでもあり、どうしても後回しにされがちなのです」と、山村弁護士は話す。
劣化状況と利用状況
調査によると、空き家の47.1%は「部分的な腐朽・破損あり」、21.2%は「構造上の不具合あり」となっており、7割以上が劣化している。富裕層が所有する別荘やセカンドハウスも、利用されないまま資産として保有され続ける事例は少なくない。
山村弁護士は空き家の7割超が劣化や損傷を抱えている点について「老朽化した実家や複雑な権利関係を抱えた不動産が多く、そのままでは活用できず、解決にコストが発生するものがほとんどです」と指摘する。
直近1年間での空き家解消状況を見ると、使用目的のない空き家の約85%、貸家用・売却用の空き家の約70%が、依然として放置されていた。使用目的のない空き家を持つ世帯の約4割は今後も保有する意向を示し、別荘やセカンドハウスとして維持する割合も47.2%にのぼる。
政府の法整備と残る課題
政府は「空家等対策特別措置法」の改正により、倒壊などの恐れがある空き家を「特定空家」や「管理不全空家」として指定できるようにした。これにより、固定資産税の減額特例が外れる仕組みを導入し、税負担を通じて対策を促す狙いだ。さらに2024年からは相続登記が義務化され、資産管理や売却・活用を促進することが期待されている。
しかし、全国の自治体では予算・人員の不足や基準の整備不足により、管理不全空家の勧告はわずか6.0%、特定空家の指定も42.1%にとどまっている。
山村弁護士は課題について次のように語る。
「相続登記の義務化など前進はありますが、空き家問題の最大のネックはやはりコストです。所有者不明土地管理制度も整備されましたが、予納金などの負担が大きく、利用は限られます。行政が介入する制度は対象が限定され、利用例も少ない。結局のところ、解決には費用が発生し、その負担を相続人が背負わざるを得ないのが現状です」
さらに将来の懸念として「今後は外国人が購入したセカンドハウスが放置されるケースも増えるのではないかと感じます。DIYブームなどで地方の古民家を購入する動きがありますが、飽きれば放置され、空き家がさらに増える可能性があります」とも指摘する。
相続と空き家問題は、誰にとっても無縁ではない。特に富裕層世帯では資産規模が大きい分、事前の準備や話し合いが活用の成否を左右する。山村弁護士が指摘するように「空き家対策=相続対策」であり、家族が元気なうちに一歩踏み出すことが、将来のトラブルや地域の負担を防ぐ第一歩となるだろう。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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