幸せな同居生活のはずが…妹夫婦は離婚、父は突然死
新築した二世帯住宅は、土地も建物もすべてまどかさんの父親名義です。えみりさんの夫は、勤務先から遠くなることと、舅・姑と同じ屋根の下に暮らすことに難色を示しましたが、えみりさんの父親がすべて負担するという条件で、しぶしぶ了承したかたちでした。
「くわしい事情はわからないのですが、妹家族は二世帯住宅に越してからすぐ、うまくいかなくなりました。義弟が帰宅しなくなり、そのうち離婚になったのです」
しかし、そのような状況にあっても、えみりさんは正社員になることなく、週4回1日数時間のパート勤務を継続。両親の年金と預貯金で、これまでと変わらない生活を送っていました。ところが一昨年、突然父親が亡くなってしまいます。
「父の葬儀の直後、母からは〈あなたは相続を放棄してちょうだい、あなたのところは2馬力で働いているのだから〉と…。遺産を分割するには、家を売らなければいけないから、ということでした」
「妹はシングルマザーだし、母親の収入は遺族年金だけ。これから生きていくには遺産が必要だというのです。もっとも、自宅以外の財産がどれぐらいあるか、私ははっきり教えてもらえませんでしたが…。でも、了承するしかありませんよね」
まどかさんの夫も「君の判断に任せるけれど、お義母さんとえみりさんは、かなり大変なのかもしれないね…」といって、母親とえみりさんの状況を気にかけていました。
しかし、しばらくするとまどかさんの母親からSOSが入るようになります。
「生活費を援助してほしい」と母が…
「会社を出るのが遅くなって、息子の保育園のお迎えの時間を過ぎそうになり、ようやく滑り込んだら、母から間を置かずに5件ぐらい着信があったことに気づいたんです」
〈すぐに電話して〉という留守番電話のメッセージに、まどかさんは子どもをおんぶしながら急いで折り返しの電話をしました。
「事故でもあったのかと思って慌てて電話を掛けると、生活費を援助してほしいというSOSでした。子どもが体調を崩し、えみりがパートをたくさん休んでしまったから、というのが理由だったのですが…」
まどかさんは、パートを少し休んだぐらいで生活費のやりくりがつかなくなるなんて、一体どうなっているのかと、思わず電話口で声を荒らげてしまいましたが、母親は〈今回だけ、すぐ返すから〉と平身低頭。まどかさんは気の毒になり、その場でネットバンクから5万円を送金しました。
ところが、その後もちょくちょく母親からお金の無心の電話が来るようになりました。
「うちは共働きですが、決して余裕があるわけではありません。マンションのローンを払って、息子の教育費だって貯めなければなりませんし…」
自宅の一室で、母親と電話で言い争っていると、心配した夫が声をかけてきましたが、まどかさんは「なんでもない、気にしないで」というのが精一杯でした。
