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設計の質は「プロセス」で決まる
病院再生の設計力を最大化する病院設計タスクチームの取り組みは、どこで成果を出すのでしょうか。 言い換えれば、設計力の優劣が表れるのはどこなのでしょうか。
答えは完成した設計図面ではなく、設計のプロセスにあるといえます。 特に病院建築では、運営環境は病院ごとに異なり、患者さん・病院事業者・スタッフがおかれる状況も要望もさまざまです。 三者にとって真に理想の病院がつくれるかどうか、最初の分岐点は要望を的確に把握できるかどうかにあるはずです。
対話を積み重ねる病院設計プロセス
そのために信頼できる方法は、第一にヒアリングを重ね、さまざまな資料で確認することです。 実際、ヒアリング時間は規模にもよりますが延べ2000時間から4000時間にもなります。 病院設計は全工程を通じて延べ2万時間程度を必要とするので、全体の1割から2割の時間をヒアリングに費やすことになります。 病院の機能は複雑で他の施設に比べ関わる人の数も多く、どうしてもそれくらいの時間がかかります。
また、設計着手時の病院事業者とのコミュニケーション密度も重要です。 例えば、最初の予算や事業費の確認は、設計を始める前の最も重要なプロセスです。 その金額内でできるだけ予算を抑えたいのか、その金額でできることが想定よりあまりに低ければ計画を延期または中止してもよいのか、あるいは追加の調達努力が必要になったとしても、金額を超えてでもグレードの高い病院を実現したいのか、同じ金額でも、病院事業者によって意味合いが異なります。
さらには、言葉で上がってくることがない真の要望も読んでいかなくてはなりません。 ある建替え計画では、すでに敷地いっぱいに建物が建っているため、現在地での建替えは相当困難と判断していた病院がありましたが、詳しく事情をうかがってみると、できることなら現在地で短期間の工事で済む建替えを実現したいというのが真の要望でした。
こうして病院の要望が把握できれば、設計者はそれに応えられる方法を複数、図面や絵を用いて具体的な形で提案しなければなりません。 設計ではほとんどすべての課題についていえることですが、解決策は必ず複数あります。 考え得る複数の解決策から選択することによって、病院は納得して建築計画を進めることができます。
また、提案をすれば、病院から「それなら、こうしたい」という新たな要望を聞けるかもしれません。 それに応えるべく、再び提案する・・・・・・病院設計はヒアリングと提案の繰り返しです。 つまり対話の連続なのです。 それが設計のプロセスであり、いかに密度の濃い対話をするか、病院が満足できる提案ができるかが、プロセスの質、ひいては設計の質であるといえます。
