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設計力で実現する「地域と共生する病院」
少子高齢化が進む中、病院の役割はますます重要になっています。 高齢者が増えているだけでなく、特に人口減少が進む地方都市では、まちの賑わいづくりの中核としても期待されています。 高齢者はもちろん、子育て世代にとっても、近くに病院があることは安心して暮らすために不可欠です。 住んでいる所から病院までの距離が、住みやすさに大きな影響を与えます。
また、人生100年時代を迎え、60歳を過ぎてからも長く健康に過ごすことへの関心が高まっています。 病院には、病気やケガの治療だけでなく、介護や福祉、病気予防、健康づくり、健診や運動機能のサポート、相談機能といった、地域の医療・福祉・保健ニーズを総合的に支える役割が求められています。
少子高齢社会において、病院は「治療の場」だけでなく、人々が健康で豊かな日々を過ごすためのコミュニティの場としても重要な存在となります。 まちと共生し、その中核として機能する病院こそこれからも選ばれ生き残る病院になると私たちは考えています。
まちの人々に開かれた医療拠点として 相模原協同病院
1945年8月、念願の無医村解消を果たすものとして20床で開院した相模原協同病院は、その後、増築や新棟建設などを進め、地域になくてはならない急性期医療を果たす病院として大きく発展していきました。 しかし、建物の老朽化や狭隘化、駅前の立地で駐車場も不足しがちであることから移転新築に取り組みました。 建設地は駅からは2kmほど離れていますが、今後の新たな発展が期待される街区です。
400床を備えた地域の中核病院の設計に当たって大きなテーマとしたのは、地域になじみ、地域に開かれた病院であり、同時に、長くこの場所で、求められる役割を果たし続ける可変性を備えた病院であることでした。
設計の大きな特徴は外来診療棟と病棟の2棟による分棟構成としていることです。 分棟にすることで建物の高さを2層分、約10m下げ、地域の人が親しんできた既存の森の樹木の高さ以下に抑えました。
また、隣接する農業系の学科がある高校とのコラボレーションも念頭に、JAの病院ならではの屋根付きの野菜直売所を敷地内に設けました。 患者さんやその家族だけでなく、近隣の住民も採れたての野菜を求めて訪れます。
さらに野菜直売所の奥にはイベント広場を設けました。 周辺住民が利用できるフェンスで仕切られていない樹木帯と一体となった多目的広場は、年に1回開催するお祭りの会場ともなっています。 2024年も3000人を超える来場者で賑わいました。
多くの人が出入りする外来診療棟は入口横にコンビニエンスストアを誘致し、2層吹き抜けの快適なイートインスペースを設けています。 またメインのホスピタルストリートと並行して、特定の用途を持たせない縁側空間「さがみはらラウンジ」を設け、床から天井までの大きなガラスを連続させて大きく広がる空や森の緑を眺めながらくつろげるスペースとしました。 壁には職員手づくりのアートも飾られ、患者さんや家族だけでなく地域の人も訪れています。
駅から少し離れた立地になることから、構内にはバスロータリーを引き込むことを計画し、所轄の警察署や自治体との交渉を経て実現しました。 2連バスが運行され、患者さんや見舞客、さらに近隣の住民や隣接する高校の生徒も利用しています。
地域の人が病院に足を踏み入れ、さまざまな形で利用するきっかけを用意した病院ですが、建物の正面も将来の幹線道路に向かうように、地域に正面を見せるような配置としました。 病院の入口となる診療棟はもともと低層ですが、エントランス部分は開放的なつくりとし、さらに水平ラインを強調して土地になじむデザインにしています。 そこから病棟までを一直線につなぐ大通り「ホスピタルストリート」を設け、そこに面して外来ブロック受付を計画しました。
