病院の閉鎖や統合が相次ぐニュースに、私たちの医療の未来は大丈夫だろうかと不安を感じたり…。それは日本の医療が直面する、深刻な危機のサインかもしれません。本記事では、久米設計 病院設計タスクチームの著書『病院再生の設計力 2』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集し、7割超の病院が赤字という衝撃的な実態と、その背景にある根深い構造問題について解説します。

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7割以上の病院が赤字経営に

今、想定を上回るスピードで進む人口減少や少子高齢化によって医療を巡る環境は激変しています。 病院の倒産が話題になったり、全国各地で病院の統合が行われたりしている時代はこれまでにありません。 病院経営は今まで誰も経験したことのない極めて厳しい環境のもとにあります。

 

2024年度の主要病院関連団体の調査によれば、医業利益で見た赤字病院の割合は73.8%に上りました。 コロナ禍前の2019年と比べて約20ポイントも上昇しています。

 

経常利益で見ても、コロナ関連の補助金を除くと68.6%の病院が赤字で、これも2019年から20ポイント以上上昇しています。 この調査には国や自治体、その他の公的団体が開設する病院も含まれますが、いずれにしても、これだけ高い割合で赤字病院が存在したことは過去に例がありません。 さらに医業損益の内容をもう少し詳しく見ると、現在の赤字の解消が容易でないことが見て取れます。

 

【図表】医業利益と経営利益の推移

 

一病院あたりの医業損益額は、2018年度の3億7316万円から2023年度には7億9231万円まで拡大しました。 2020年度からプラスだった経常利益も、コロナ関連の補助金がなくなったことで2023年度には再びマイナスに転じています。 100床あたりの平均で見ても、2023年度の医業損益は2億2065万円で、2018年度から倍以上悪化していることが分かります。 表にも示したように、年度ごとの医業収益はコロナ禍前からそれほど変化していないのに対し、医業損益は大きく悪化しているのです。

 

【図表】一病院あたりの損益・100床あたりの平均

 

病院関係3団体は「2022年度と2023年度ともに赤字病院の割合が7割を超え、経常利益においても補助金がなければ殆どの病院が赤字経営となる異常な状態にあり、現在の診療報酬について構造的な問題があると言わざるを得ない」(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会「医療機関経営状況調査」序文、2023年4月公表)と述べています。 しかし、現在の国の財政には余裕がありません。 そのため今後も診療報酬が大幅にプラス改定されることはあまり期待できません。

 

さらに、2024年は医業収益の柱である診療報酬の2年に1度の改定の年となりましたが、全体で0・88%の引き上げと、わずかなプラスにとどまりました。

 

※「2024年度病院経営定期調査最終報告」(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会3団体による合同調査。 調査期間:2024年7月2日~9月27日、有効回答数:1242病院)

医師・看護師の不足

さらに今後の病院経営を脅かすものに働き手の減少があります。 特に地方病院では看護師や医師、技師などの医療スタッフ不足が深刻化しており、コロナ禍を経て事務スタッフや清掃スタッフなどの不足も目立ってきています。

 

厚生労働省の調査では2022年の年末時点で就業している看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師) 数は約166万4000人*1ですが、多くの病院が不足を感じています。 さらに今後、20万人近くの人材が不足するという推計も公表されています*2

 

また国が先頭に立って推進している「働き方改革」は医療分野も例外ではなく、すでに看護師については、ほかの分野・業界と並んで2019年4月から時間外労働の上限が定められ、有給休暇の取得も義務化されています。 さらに2024年4月からは医師の働き方改革が始まり、人材の確保をさらに難しくする要因となっています。

 

 

【図表】看護師等の必要総数の予測

 

※1厚生労働省「衛生行政報告例」2023年 12 月

※2厚生労働省 「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況 」 2023年7月

 

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※本連載は、久米設計 病院設計タスクチームの著書『病院再生の設計力 2』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集したものです。

病院再生の設計力 2

病院再生の設計力 2

久米設計 病院設計タスクチーム

幻冬舎メディアコンサルティング

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