秋は、新体制となった税務署が本格的に動き出す時期
税務調査は年に2回のピークを迎える。1つは確定申告後の4月、もう1つは秋、特に9月から12月にかけてだ。
なかでも秋の調査は、新体制となった税務署が本格的に動き出す時期であり、時間をかけた徹底調査が特徴となる。春の調査は、各部署に割り当てられたノルマ件数を消化する色合いが強く、1件あたりの調査は短期で軽めだが、秋は担当者がじっくりと調べ、納得がいくまで追及する傾向があるため、特に注意が必要だ。
令和5年度追徴税額、調査精度向上で「直近10年で2番目」の高水準
令和5事務年度の所得税の調査件数は、前年度比約95%と減少した。しかし、件数が減ったにもかかわらず、申告漏れ所得金額は前年比約110%、追徴税額は前年比約102%といずれも増加している。追徴税額は直近10年で2番目に高い水準である。
この背景には、調査精度の向上がある。国税当局は過去の申告漏れ事例やデータ分析を基に、申告書の不自然な金額や現金収入の多い業種を重点的に抽出している。そのため、従来以上に効率的かつ精密な調査が可能になったとされる。
国税庁の重点事項…富裕層の海外資産調査、消費税の適正課税確保
国税庁は、富裕層の海外資産調査と並び、消費税の適正課税確保を重点事項としている。滞納は依然高水準であり、2025年も差押えや公売を通じた未納対応が強化される。
特に、仕入税額控除の適正性は重点調査対象であり、請求書の保存や帳簿管理に不備があれば厳しく追及される。令和5事務年度では、消費税の追徴税額が過去最高を記録しており、無申告者1件あたりの追徴税額も過去最高水準(平均274万円)となっている。
他の税目に比べて調査対象割合が高い「相続税」
相続税は他の税目に比べて調査対象割合が高い傾向にあります。令和5事務年度は相続税の実地調査が8,556件行われ、申告件数(約15万5,740件)に対する実地調査率は約5.5%。一方、法人税の申告件数は約318万件で、実地調査は約6万2,000件、実地調査率は約2.0%にとどまる。相続税の調査で非違があった事案は約7,200件(実地調査の約84%)で、追徴税額は735億円、無申告事案1件あたりの追徴税額は約1,787万円と高額になっている。
秋の調査では、SNSやブログを通じた生活実態調査、自宅訪問時の雑談や香典帳・年賀状・アドレス帳などの確認が行われ、隠し財産の手がかりを探られることも少なくない。
9月が税務調査の最盛期となる理由…元マルサ税理士が解説
「9月は税務調査の最盛期だが、その背景には税務署の人事異動と人事評価が密接に関わっています」と語るのは、元マルサで税理士の上田二郎氏だ。
税務署の人事異動は毎年7月10日に行われ、職員の約3割が一斉に入れ替わる。新体制のもとで本格的に調査が始まるのが9月であり、そこから年末にかけての調査成績は人事評価に直結する。
「12月末までに成果を上げた調査は、第1回の人事評価の参考数値に使われるため“金”と呼ばれ、翌年3月末までの調査は最終の人事評価に滑り込むために“銀”と呼ばれます。そして、6月までに終える調査は人事評価後のため“銅”と呼ばれ、モチベーションを保てない調査官は流し気味の調査になります。国税庁は公式にはノルマを否定しますが、実際には各署が調査実績を国税局に報告しており、それが個人の評価に跳ね返る。だからこそ、秋の調査官は本気で成果を求めて動くのです」(上田氏)
厳格化する秋調査に備えるために
2025年の秋の税務調査は、追徴税額が過去最高水準に達し、データ分析を通じて精密化が進む局面にある。春よりも徹底度が高く、例年以上に厳しい調査となることは確実だ。
消費税の帳簿・請求書管理、相続財産の整理、海外資産の申告など、平時からの準備こそが納税者にとって最大の防御策となる。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
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