ふるさと納税の仕組みと富裕層への恩恵
ふるさと納税でポイントを付与する仲介サイトの利用は禁止――。楽天グループが総務省による告示の無効確認を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、東京地裁で開かれ、楽天は「過剰な規制で違法」と訴えた。これに対し国側は「事業者に法的利益はなく、制度趣旨を損なう過熱競争を是正するための措置」と反論。富裕層優遇との指摘や返礼品競争の過熱が問題視されるなか、制度の在り方を問う裁判として注目される。
ふるさと納税は、寄付額から自己負担の2,000円を除いた金額が所得税や住民税から控除される制度である。控除を受けるには確定申告を行うか、「ワンストップ特例」を申請する必要がある。たとえば5万円を寄付した場合、2,000円を除いた4万8,000円が控除対象となり、さらに返礼品を受け取ることができる。返礼品の価値が2,000円を上回れば、実質的な負担は軽減されることになる。
寄付額には上限が設けられており、年収が高いほど上限額は大きくなる。このため高所得者ほど多額を寄付でき、結果として大量の返礼品を受け取ることが可能だ。実際に寄付上限いっぱいを活用し、返礼品を知人や友人に分ける富裕層も存在する。なお、返礼品の経済的価値が50万円を超える場合は、所得税法上「一時所得」として課税対象となる点にも留意が必要である。
国の主張「事業者に法的利益なし」
国側は弁論で「ふるさと納税制度の仕組みに関して、楽天には法律上保護される利益がなく、訴訟の要件を欠いている」と主張した。ふるさと納税は「特例控除という恩恵を通じて政策目的を実現する課税権調整立法」であり、法的利益を有するのは国・地方自治体・納税者に限られると強調した。
さらに令和6年度には、仲介サイト運営事業者に1,656億円が支払われるなど経費が膨らみ、返礼品競争に加え「ポイント還元合戦」が過熱していると指摘。寄付総額の5割を上限とする費用規制が十分に機能せず、「制度本来の趣旨にそぐわない不健全な構造を招いている」と訴えた。
楽天の反論「一律禁止は裁量権の逸脱」
一方、楽天は「告示は自治体向け規制であるものの、実際に不利益を被るのはポイントを提供するサイト運営事業者である」と反論。ポイント付与を全面的に禁止する合理性はなく、法改正を経ずに大臣の告示で制限するのは裁量権の逸脱にあたると主張した。
また、ふるさと納税の寄付の中心を担う高所得者層に対し、ポイント付与の禁止は寄付意欲を削ぎ、結果的に自治体財源の減少につながると懸念。制度全体への悪影響を訴えている。
楽天は10月から「楽天ふるさと納税」でのポイント付与を停止する方針だが、「楽天市場」での通常ポイントやカード決済ポイントは引き続き付与される。
村上誠一郎総務大臣は9月9日の記者会見で「ふるさと納税は、ふるさとやお世話になった自治体に感謝を示す制度であり、公金を用いた公的な仕組みである。インターネット通販のような性格を帯びてはならない」と述べ、ポイント付与競争の禁止を改めて強調した。
今後の焦点…制度趣旨か、事業者裁量か
楽天は「自治体と協力し制度を拡大してきた努力を否定する過剰規制」と反発。今後の裁判では、ふるさと納税の制度趣旨とポータル事業者の役割、さらに富裕層による節税利用の是非が主要な争点となる見通しだ。判決は、制度の方向性を左右する重要な判断となる可能性がある。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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