「老後は貯金がすべて」…その言葉の重み
「毎日、朝6時には掃除しているの。体が動くうちは、自分のことは自分でと思ってね」
そう語るのは、東京都郊外のUR団地で一人暮らしをしている67歳の西村和子さん(仮名)です。月収は年金と少しのパート代を合わせて23万円ほど。いわゆる“質素な年金暮らし”に見えますが、実は預金額は2億円近くあるといいます。
「贅沢していたら、こんな額にはならなかったと思いますよ。お金があっても、使い方次第ですから」
ボロボロのエコバッグを手に、買い物はいつも特売の日を狙う――見た目には“資産家”とは程遠い和子さんの暮らしぶりには、意外な過去と理由が隠されていました。
和子さんは団地に40年以上住んでいます。大学卒業後、一般企業に就職。20代後半で結婚し、夫と共働きで堅実に暮らしてきました。
「子どもを大学に行かせるまでが勝負、という気持ちでした。夫と交代でパート勤務や短時間勤務を選んで、生活費を切り詰めていました。旅行もあまり行きませんでしたね」
和子さんが30代だった頃、時代はバブル景気の真っ只中。勤務先の企業では確定拠出型の退職金制度が導入され、株や不動産を少しだけ持っていた夫婦には「想像以上の利益」が舞い込んできました。
「今思うと、バブルの恩恵を無意識に受けていたのかもしれませんね。投資に詳しかったわけじゃないんです。持ち家だった不動産が高騰して、売却後はそのまま団地に住み替えたんです。ローンもなく、管理費も安い。おかげで、生活費はずっと抑えられました」
和子さんの金融資産は、主に以下の3つで構成されています。
退職金と企業年金の一部(約4,000万円)
バブル期に売却したマンションの利益(約8,000万円)
長年の預貯金・株式配当など(約8,000万円)
いずれも、特別な投資スキルや運用知識があったわけではなく、「堅実に貯め、増えた資産を使わずにおいた」結果だといいます。
