戸建てを望んだ娘の願いに「二世帯住宅暮らし」を始めたが…
「まさか、ここまで老後が削られるなんて」
そう零すのは、73歳の主婦Aさんです。夫と共に暮らすのは、2年前に建てた二世帯住宅。同じ敷地に娘一家が住んでいます。
「娘夫婦は戸建てに住みたがっていましたが、予算が足りないと相談を受けていたんです。だったら、私たちが住んでいた家を二世帯住宅にすれば? と提案してしまった。ちょうどリフォームしたいと思っていたし、何より娘や孫の近くにいたいと思ったんです」
完全分離型の設計でプライベートも守れるはず。そう思ったAさん。建物やその他費用を含めて総額は約7,200万円。Aさん夫婦が3,000万円を一括で支払い、残りは娘夫婦がローンを組んで払うことになったのです。
しかし現実は、想像以上の依存と負担の連鎖でした。
共働きで忙しい娘夫婦は、小学生の孫の面倒をAさん夫婦に任せるようになりました。「ただいま!」と孫がAさんの家のドアを開く光景に、最初は喜びもあったといいます。
しかし、次第に日常は細かい家事で埋め尽くされるように。孫の食事や習い事の送り迎え、洗濯、掃除、買い出しの手伝い。週末には、孫を丸1日預かることも。夫婦で少し休もうとしても、スマートフォンには絶えず「お願いLINE」が届き、落ち着く暇はありません。
夏休みには娘一家はハワイ旅行に行き、その間、犬と庭の世話を任されたAさん。冒頭のように溜息が出るのも当然です。
