「孫と娘のそばで暮らしたい」――そう思い二世帯住宅で暮らし始めたAさん。しかし、想像以上の家事・孫の世話・費用の負担が押し寄せ、老後は削られる一方に。家族のために選んだ暮らしが逆に重荷となった例を見ていきましょう。

孫費用もかさみ「離れたい」が…実行のハードルは高い

「身体的にも大変ですが、金銭的な問題もあって。孫が毎日のように来るので食費も日用品費も高くなります。お小遣いを渡したり、洋服を買ってあげたりもしますしね。離れて暮らしていた時とは『孫費用』が全然違うんです」

 

年金は夫婦で月20万円ほど。二世帯住居に費用を投じ、貯蓄にもそれほど余裕はありません。娘のそばで暮らすことのできる安心感、孫の成長を近くで見ることができる幸せ――。それを上回る負担に、「離れて暮らしたい」という思いが募って仕方がないといいます。

 

しかし、娘一家の生活を考えると、そう簡単にもいかないというAさん。また、いくら分離型といっても二世帯住宅。Aさん夫婦の建物だけを売却するのは容易ではありません。

 

「それに、私と夫はもう70代。いつ病気になるともわからない。いざというとき娘夫婦に助けてもらうかもしれないと思うと、なかなか本心は言えません。取り返しがつかないことをしちゃったのかもしれないな、と思っています」

 

完全分離型だから大丈夫……そんな見通しは甘かったと言わざるをえなかったようです。また、二世帯住宅の設計や資金計画以上に、老後に向けて必要なのは「自分たちの生活をどう守るか」という視点だと、夫婦の疲れ果てた表情が物語っています。

 

 

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